学生教育とイノベーションの創出を目的とした中長期研究インターンシップ<修士・博士・ポスドク対象>を推進する協議会です。

近藤 武史

kondo

複雑な階層が織りなす、生物の体づくりに迫る

一つの細胞である受精卵が分裂を繰り返しながら体を作り上げる発生過程。そのダイナミックな形づくりが成り立つためには、これまで研究されてきた遺伝子の配列やその機能がわかっただけでは説明できないことがたくさんあります。遺伝子やその産物であるRNAやタンパク質、さらには細胞・組織が相互作用し合い、協調しているからです。私は、これらの生物体内での階層を超えた発生システムのルールについて、答えを見つける研究に取り組んでいます。

続々と湧き出る形づくりへの疑問

生物における最も根本的なルールはセントラルドグマです。DNAからRNAに情報を移す転写、RNAからあるタンパク質をつくるアミノ酸や構造の組み合わせを決める翻訳を行います。地球上に存在する細胞はこのシンプルなルールのもとで成り立っているにもかかわらず、生物は驚くべき多様性を示します。この多様性を支えるシステム情報はゲノムに書き込まれています。いざゲノム配列を手にすると、線虫とヒトの間でさえ遺伝子数にはほとんど差が見られないこと、その多くはよく保存されていることが明らかになりました。つまり、単純な構成要素の数ではなく、遺伝子の制御関係や、産物であるRNAやタンパク質の相互作用やフィードバックの規則の変化、全体としてのネットワーク構造の変化が種の多様性を生み出す原動力の1つであると考えられます。細胞や組織の挙動は、遺伝子が協調して働くことにより制御されます。生物は1つの階層にとどまらず、システマチックに遺伝子、分子、さらには細胞、組織が互いに影響し合い、全体として個体レベルでの秩序を生み出しています。私は生物が形づくられる発生過程においてその謎の解明に取り組んでいます。

小さいペプチドがもたらす新しい役割

私はこれまでにその疑問を明らかにするために2つの視点で研究を行ってきました。1つはゲノムに書き込まれている新たな情報の解明です。ゲノム解読が進む中で、タンパク質をコードしない領域(非コード領域)の重要性が明らかになりつつあります。2007年に私は、ショウジョウバエゲノムの非コード領域から11アミノ酸長という非常に短いマイクロペプチドがつくられること、このペプチドが胚発生に必須であること、さらに2010年には発生過程において転写因子の働きを逆転させるスイッチとしての役割をもっていることを明らかにしました。当時、意味が示されていなかったゲノム非コード領域が生物学的な役割を持っていることの一例を明らかにし、これはゲノムという階層の捉え方に新たな視点を与えるものとなりました。

上皮組織陥入時の細胞協調作用を捉える

もう1つの研究は、発生過程における形態形成の仕組みです。受精卵から分裂を繰り返し、組織や器官を形づくる際、もっともダイナミックな動きの1つが上皮組織の陥入です。上皮とは細胞が互いに密に接着することで形成されるシート状の多細胞組織です。発生過程では、このシート構造が変形を繰り返すことにより、様々な器官がつくられていきます。陥入はこの形態形成運動の1つで、シートが管構造へと変形する運動になります。こういった多細胞組織の動きを考えるとき、正確に器官を形づくるためには個々の遺伝子の働きのみでなく、適切な場所とタイミングで個々の細胞の振る舞いが協調することが鍵となりますが、どのようにその制御がされているかについてはいまだ不明な点が多く残されています。私は、ショウジョウバエ胚上皮組織の陥入運動における細胞挙動の詳細をライブイメージングにより実際に観察しました。すると、40個ほどの細胞のシートが最初ゆっくりくぼみ、その後急速に陥入する、という2段階で陥入が起こっていること、加速には分裂期に伴う細胞の球形化が関与することを見出しました。さらに、ある1つのメカニズムだけではなく、3つのメカニズムが互いに補完しながら陥入運動が調整されていることも突き止めました。これらは、上皮組織の陥入運動における細胞間協調作用の新たなルールとなるものでした。

近藤先生図版

ショウジョウバエの胚発生過程における細胞の挙動
ライブイメージングにより胚発生における細胞の時空間動態を詳細に観察することができる。(緑:細胞形態マーカー、マゼンタ:染色体マーカー)

新しい技術とともに発生学は次のフェーズへ

近藤先生プロフィール写真
今後もゲノムから動物胚の自発的な形態形成運動までをつなぐ発生システムを明らかにしていくにあたって、ライブイメージングによる観察に加え、次世代シークエンサーなどの技術や数理解析の手法も積極的に取り入れていきます。これまでに培ってきた経験と、新しい技術を生かしながら、まず胚空間における全遺伝子発現状態について詳細な記述を行います。そしてそのデータを基盤として、特定の遺伝子に軸足を置くことなく、俯瞰的に遺伝子ネットワークを解析し、ゲノム-細胞-組織-個体の階層間をつなぐ法則を明らかにしていきたいと考えています。このショウジョウバエをモデルとした研究をベースに、動物発生に共通する基本ルールを見出すことが長期的な目標です。未知の世界を知るという好奇心を発端として、新旧の技術を生かして発生学を次のフェーズへ推し進めるべく研究を進めていきます。また、新たな研究には人と人との相互作用も必要です。専門の異なる方とも積極的にネットワークを構築し、協調して面白い研究を進めていきたいと考えています。問い合わせや訪問も歓迎していますので、この美しい発生現象に興味のある方はお気軽にご連絡ください。

研究室HP

http://www.cellpattern.lif.kyoto-u.ac.jp/

主要論文

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