学生教育とイノベーションの創出を目的とした中長期研究インターンシップ<修士・博士・ポスドク対象>を推進する協議会です。

舛田 武仁

masuda

フリーライダー問題を解決する

防災や美しい景観に代表されるように、誰もが同時に利益を享受できる「公共財」には、その性質ゆえ互いに他人に財の生産努力を押し付けようとする「フリーライダー」問題が避けられず、市場ではこれを解決できません。私はこのフリーライダーを防止する制度の設計に「ゲーム理論」を用いて主に取り組んできました。この問題に対しては、経済学が従来想定してきた画一的な人の行動原理モデルを適用した制度だけではうまくいかないことが、近年の被験者実験研究結果で示唆されています。そこで私は、本来多様である人の行動原理モデルを考慮にいれた制度設計を目指して研究しています。

公共財とフリーライダー

防災対策や美しい景観など、誰もがアクセスでき、かつ同時に消費できるモノ・サービスを「公共財」といいます。公共財のこの性質により、一方ではいったん作られさえすれば多くの人が恩恵を被る可能性を持っています。他方で、利害の当事者間には、誰か他の人が公共財を供給する費用や努力を負担してくれれば自分は最も楽ができるため、公共財に対して貢献しない「フリーライダー」となる動機が働きます。そして、皆が同様にフリーライダーとなる結果、本来供給されるべき公共財が供給されないという非効率が起こってしまうのです。

組織や社会に「ただ乗り」する人を、経済学から防止したい

そのような非効率の解決には、政府など組織に中立な立場から、上手な費用負担・賞罰の仕組み(利害の当事者との交渉手順)を設けることが必要です。個々人のやる気をうまく引き出しながら社会全体にとって望ましい資源配分を達成するよう,分権的な意思決定手続きを構築する必要がありますが、その分析手法は長年理論に限られていました。中でも、構成員の意思決定は、相手の出方を考え、いかに自分の利益が高くなるかが判断基準となる、というゲーム理論が活用されてきました。

しかし、この考え方をもとに設計された解決策の多くは、人間行動に対する画一的で強い合理性に依拠しているため、応用の可能性は未知数のままでした。近年盛んになっている被験者実験研究はこの問題点を明るみにすることになりました。被験者の考えることは、ゲーム理論が想定する個人像のものとはかけ離れていたのです。

例えば、ヒトはしばしば利益よりも規範に従うことや、根本的な不確実性に直面すると楽観・悲観度合に応じた意思決定をすることも観察されています。公共財においても、半世紀以上にわたり理論的にデザインされた公共財供給メカニズムの殆どは被験者実験で機能しませんでした。これまで私が発表した論文でも、公共財供給メカニズム実験参加者の行動原理が多様であるという結果を得ています。例えば、被験者の中には利己的に振る舞う者の他に、一定数の相手が協力的行動を示したときに限り自分も協力的行動を取る、いわゆる条件付き協力者がいることなどを再確認しています。実験研究者は、ヒトの行動原理の多様性を見出し、従来の理論の見直しを迫っているのです。

実験とモデル化を組み合わせて、より社会に近い制度を目指す

公共財供給メカニズムの開発はなお急務ですが、このギャップを埋めるには、多様な行動原理が混在してもなお機能する制度、いわば頑健である制度の探究が必要です。

では、これから制度設計研究者が考慮すべき行動原理とは何でしょう。今後の研究では、その手掛かりを意思決定理論に求めることに未来があると思います。意志決定理論は、「後悔回避」、「誘惑」、「プライド」など、特に不確実性下での個人の主観を織り込んだ事柄を、数学的、統計的にパターン化し、計算に盛り込んできました。近年、意思決定理論は実験研究の増加と相まって著しい発展を見せ、個人内の問題という枠組みを超え、戦略的状況へとその応用が拡大する機運が高まっています。しかしながら、その知見を制度設計の理論にまでフィードバックした研究は発展途上であり、そのうち被験者実験との強く連携しているものはわずかです。そこで、意思決定理論の知見を取り入れながら、参加者の多様な行動原理に対して頑健なメカニズムを理論・実験の両面から探ってみたいと考えています。

人間行動の特性に着目することで、経済学は変わっていく

上記の目的を達成するために、私の研究では、意思決定理論、メカニズム・デザイン、実験経済学を相互補完的に用いていきます。つまり、1)今まで意思決定理論等で洗練されてきたリッチな個人のモデルを多数の制度参加者にあてはめ、2)その下で社会目標を遂行する制度を理論的に導出、3)開発した制度の性能をラボ実験等で検証し、必要であれば1)へ戻って修正するという循環を研究の柱とする、という手法です。

経済学は、人間について、これまで合理的な設定をあてはめることで理論を構築してきましたが、近年、実験が盛んになってきたことで、従来の理論の見直しが迫られています。私自身も、日常を考えると教科書どおりにいかない事例、弱者などの、理論の想定外の状況にある人が困っている現実を解決できない、という事例に多く出会ってきました。しかし、経済学での実験研究の歴史は若いので、決定的な行動モデルがなく意見が割れているのが現状です。私は、このような中で、人間行動の特性に立脚した経済制度の構築を目指し、公共財供給をはじめとした問題に挑戦していきたいと思います。

個人HP

https://sites.google.com/site/tmasudaexpecon/

主要論文

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