学生の視点、企業の視点、教員の視点(詳細事例)

実際の研究インターンシップの詳細について、学生・企業・教員の皆さまに語っていただきました。学生からは、インターンシップに参加した目的、インターンシップ中の生活や成果、インターンシップ後の変化、キャリア選択に及ぼした影響について、企業からは、テーマ設定の考え方や、受入れを通して感じた事、学生と協働をおこなうことでの成果などをお聞きしました。

VOL21: ゴム配合探索プログラムの高速化/トナー断面のSEM画像をもとにした三次元顔料分布の推算
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 × 日本ゼオン株式会社 ダウンロード

VOL20: 医用画像を用いた臨床アプリケーション研究
東京工業大学 工学院 × キヤノンメディカルシステムズ株式会社 ダウンロード

VOL19: 量子アルゴリズムの能力を探る研究
京都大学 大学院理学研究科 × BIPROGY株式会社 ダウンロード

VOL18: 圧縮機用モータ開発インターンシップ
京都大学 大学院工学研究科 × ダイキン工業株式会社 ダウンロード

VOL17: 専門性を活かして企業に貢献_まちに新たな魅力を創出するための仕掛けづくり
九州大学 大学院統合新領域学府 × 株式会社竹中工務店 ダウンロード


これまでの詳細事例集

VOL16: オープンイノベション・産学連携インターンシップ
大阪大学 大学院理学研究科 × 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

VOL15: 機械学習による燃焼制御に関する研究
大阪大学 大学院基礎工学研究科 × 三菱重工株式会社 

VOL14: 三次元情報計測可能なイメージセンサーの開発 
京都大学 大学院工学研究科 × 凸版印刷株式会社 

VOL13: 文系研究インターンシップへの挑戦

神戸大学 大学院経営学研究科 × 三菱電機株式会社

VOL12: ハイブリッドで工夫!
東京都立大学 大学院理学研究科 化学専攻 × 京セラ株式会社

VOL11: 数理系リモートインターンシップ!
九州大学 大学院数理学府 数理学コース × 川崎重工業株式会社

VOL10: 丁寧なテーマ設定でWin-Win!
奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 × 株式会社 堀場製作所

VOL9: 専門性の融合!
東京工業大学 大学院物質理工学院 × 大日本印刷株式会社

VOL8: 専門の応用展開!
神戸大学 大学院システム情報学研究科 × 一般財団法人電力中央研究所

VOL7: 分野の壁を飛び越えた挑戦!
京都大学 大学院理学研究科 × 三菱重工業株式会社

VOL6: 自主テーマを提案!
お茶の水女子大学 大学院人間文化創成研究科 × シスメックス株式会社

VOL5: メーカーにバイオ系学生が挑戦!
大阪大学 大学院理学研究科 × 株式会社リコー

VOL4:企業の目線を学び、社会と研究のつながりを実感する
奈良女子大学 大学院共生自然科学専攻 × ロート製薬株式会社

VOL3:異なる専門分野に飛び込み、数学の強みを知る
九州大学 大学院数理学府 × 住友電気工業株式会社

VOL2:新しい知識の獲得とオリジナリティの発揮で自信につなげる
東北大学 大学院工学研究科 × ダイキン工業株式会社

VOL1:専門とは異なる研究を通じて新たな視点・スキルを獲得
東京工業大学 大学院総合理工学研究科 × 日本ゼオン株式会社

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研究インターンシップの成果──未来を創る種づくり

研究インターンシップは、学生、企業にとって有益であるといわれていましたが、これを普及・定着化させるのはたいへん困難なことでした。私たちは、複数の大学と複数の企業とがコンソーシアムを形成し、これまでにない新たなインターンシップのかたちを構築、普及、推進することで、この課題に取り組んでいます。

インターンシップ・テーマの一元管理をおこなうこと、さらには大学コーディネーターが学生と大学教員、企業との間にはいり、それぞれのケースに応じて個別に調整をはかることで、研究インターンシップの質が向上するとともに、量もまた拡大しています。また、この間に、インターンシップ実施に関するノウハウも蓄積し、すでにいくつかのグッドプラクティスが生まれつつあります。こうした事例を積み上げ、「人」と「知」の交流を続けることがイノベーションの創出につながると、私たちは確信しています。

<C-ENGINEのめざすインターンシップ>

コーディネーターの声

産・学間をWin-Winの関係でつなぐ「適切なテーマ設定」を

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東京工業大学 イノベーション人材養成機構 特任教授
協議会コーディネーター 古田健二先生

平成20年度から始まった「イノベーション創出若手研究人材養成プログラム」をきっかけとして、日本における中長期研究インターンシップが本格的に動きだしました。この流れが産学協働イノベーション人材育成協議会の活動によってさらに定着し、産・学では、その有効性や成功へのポイントなどについての共有化が進んでいます。
私はこれまでに約80件の博士・ ポスドクの中長期研究インターンシップにコーディネーターとしてかかわってきましたが、その多くのケースで、産・学間でのWin-Winの関係が実現しています。たとえば、インターンシップ・テーマの延長線上で企業の新技術開発が促進できたり、特許出願につながったり、あるいは、筆頭著者として企業の共同作業者と論文を投稿し、学会で論文賞を受賞するなど、その成果はさまざまです。
中長期インターンシップを成功させるためには産・学双方にとってメリットのあるWin-Winの関係を意識することが重要です。そのためには、なによりも学生本人の強い意欲と意思が前提ではありますが、受け入れ企業の理解、指導教員の理解、さらには学生・産・学での適切な準備が鍵を握っています。適切なテーマの設定もその一つで、事前の十分な意見交換・調整は大切な要素です。
本協議会の活動の活発化とともに、これらの情報の共有化が進んでいます。博士課程の学生を中心とした中長期研究インターンシップがいっそう活発化し、これに伴って日本のイノベーション能力がさらに向上することを確信しています。

見る前に跳べ

大阪大学産学連携本部 イノベーション部 イノベーション人材育成 部門〈CLIC〉特任教授
協議会コーディネーター 吉田耕治先生

「見るまえに跳べ」。これは本学の鷲田清一元総長が、インターンシップ生に発信したエールです。
近ごろの若者の風潮として、アクションを起こす前に、まずは情報収集し、万全の態勢でことに臨もうとする傾向が強くなっている気がします。そのこと自体は悪いことではないのですが、ともすれば予定調和の世界に陥り、気づきやサプライズを得る機会を逸することにつながりかねないと思っています。「見るまえに跳べ」とはその逆です。「良いことだ、やるべしだ」と思ったらその瞬間に行動を起こせ、「巧緻よりも拙速」です。予想外のできごとやハプニングはつきもので、それを経験することで気づくことも多いはずです。ピンチのときこそ、その人間の真価が発揮され、修羅場を数多く経験した人が最終的に力をつけて成功するのが世の慣わしです。そして、なにより、「直観は誤らない」というのが人間の素晴らしい能力です。皆さん、ぜひ「見るまえに跳べ」を実践して下さい。

企業の研究現場を経験した学生は、見違えるほどたくましく……

九州大学 学術研究・産学官連携本部 アドバイザー
協議会コーディネーター 池田博榮先生

じつは私自身もインターンシップの経験者で、受け入れ先の企業に就職しました。また九州大学で2008年から始めた「イノベーション創出若手研究人材養成」では、74名の博士人材を3か月のインターンシップに送り出した経験があります。彼らは見違えるようにたくましくなって帰ってきました。
将来企業を背負って立つ人材とは、「高い志と技術力ならびに国際性を兼ね備えたリーダー」であるといえます。そのためにも、できるだけ早く、余裕のある時期に企業での研究開発の方法とその現場を知ることが大事で、現場で自分の力を試した学生たちは、大学に戻ってからの研究活動を有意義なものにできるでしょう。その意味で、この協議会の「研究型インターンシップ」はイノベーション人材育成にたいへん意義深いものであると確信しています。

研究インターンシップ推進は、学生の研究意欲を刺激する好循環の要

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奈良女子大学 男女共同参画推進機構 キャリア開発支援本部 特任教授
協議会コーディネーター 河原郁恵先生

研究インターンシップの目的は人材育成とイノベーションの創出ですが、そこに至るには、固定的なキャリアに対する考え方を解きほぐす必要があるように思います。私はこれまで、女性博士人材が専門性にとらわれずにキャリアパスを拡げるための支援をしてきました。その中で、本人の意欲の尊重と、異分野への挑戦の相乗効果を強く感じることがありました。専門性は強みだと思いますが、実はその専門性を支える、強固で幅広い土台を成す「転用可能な能力」こそが、研究するみなさんの最強の武器ではないかと思います。自らその力に注目し可能性を信じることで、将来への選択肢はぐっと広がり、インターンシップで力を発揮した経験は、新たな挑戦の原動力になります。企業の皆様には、多様な分野の博士人材との遭遇による、新たな展開にご期待いただきたいと思います。研究インターンシップの推進は、学生の研究意欲を刺激する好循環の要でもあると大きな期待を寄せています。

産学協働で博士人材の能力を引き出す仕組み作りを目指して

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お茶の水女子大学 お茶大アカデミック・プロダクション人材育成部 特任講師
協議会コーディネーター 星かおり先生

指導的立場の女性比率向上が求められる日本社会において、女性リーダーの育成は本学のミッションでもあり、学生自身もその現実を自覚していることから、リーダーシップ関連科目の受講者数は増加傾向にあります。リーダーシップに限らず、高いコミュニケーション能力やマネジメントスキルなどを持つ優秀な研究者の育成に向けて、本学では様々な「しかけ」作りに取り組んでいます。その中でも、一人ひとりの特性、専門性を考慮した長期インターンシップは、個々にカスタマイズされた実践的な資質開発の場であり、働き方のロールモデルに出会える機会になっています。学生の「目的意識」と「適切な受入先の選択」は必須となりますが、3ヶ月ほど大学を離れ、企業で実務を経験することにより、学生たちは自己効力感を高め、それが研究者としてのモチベーションやスキル向上につながっているようです。今後も、インターンシップ受入の機会を広くご提供いただき、学生の潜在能力を引き出すきっかけを企業の方々と一緒に創っていきたいと考えています。

偏りの無い研究者へ

鹿児島大学 大学院理工学研究科 地域コトづくりセンター 特任専門員 
協議会コーディネーター 佐藤哲朗先生

コーディネーターとしてまる3年が経ちますが、研究インターンシップの良さを学生に対し十分伝えきれておらず、本学ではなかなか実績には繋がっておりません。
しかしながら、他大学のコーディネーターの方々の声からもわかるとおり、研究インターンシップへの参加にはたくさんの利点があります。学生のみなさんにはこの協議会のページを熟読し、研究インターンシップと学生みなさん自身の可能性に是非とも気づき、積極的にチャレンジしてもらいたいと思います。
他大学のコーディネーターが、これから研究インターンシップに行く学生を対象におこなう事前教育の講義では、リーダーとして求められる能力についての解説をされています。すなわち、リーダーとして求められる能力には「学力」「志」「健康」の三つがあり、そしてこの「志」は、個々人の「やる気」と「考え方」で構成されているのだ、と。

為せば成る、為さねば成らぬ何事も

志を肝に銘じ、イノベーションを起こすことのできるリーダーへの道筋を、研究インターンシップへの参加を通して見つけてください。