イノベーションは心を豊かにできるかー日本文化という視点で考える―


現代において、イノベーションは国家の競争力を支える原動力であり、同時に地球規模での持続可能な発展を導く手段として語られている。科学技術の進展により生み出される新たなモノやサービスは、合理的かつ合目的的な人間の思考を土台とするが、その「新しさ」が必ずしも社会にとって意味あるイノベーションとなるとは限らない。
真のイノベーションとは、「新しさの創出」と「その価値の社会的受容・経済的転換」がともに成立することを指す。この“価値”の感じ方や受容の仕方は、文化・地域性・歴史的文脈に大きく左右されるはずである。しかしながら現在、イノベーションの議論は経済的・技術的側面に偏重し、文化的視点や人文学的問いかけが軽視されがちではないだろうか。
特に「Well-Being」や「社会課題の解決」といった価値観がグローバルに共有される一方で、それらが各地域や文化においてどのように意味づけられ、実践されるべきかという視点は十分に議論がなされていない。こうした背景のもと、本シンポジウムでは「イノベーションは人間の心を豊かにできるのか?」という根源的な問いを立て、文化、感性、地域性といった視座を交えながら、多面的に考える場を創出したい。
また本シンポジウムは、単なる理論的議論にとどまらず、大学と企業が連携して行う研究インターンシップの取り組みとも接続し、「現場での創造の営み」がどのように心の豊かさや文化的共鳴と結びうるかについても展望を広げたい。特に、研究開発を担う次世代の人材が、技術力だけでなく文化的・社会的文脈の中で創造性を発揮するためには何が必要かを議論できる場としたい。
主催:一般社団法人産学協働イノベーション人材育成協議会
後援:経済産業省、文部科学省
開催概要
日時
2025年10月31日(金)14:15-16:45 (開場13:45)
開催形態
現地会場+Zoom
※現地会場は定員60名
現地会場
京都大学楽友会館 2階会議・講演室 (京都市左京区吉田二本松町)
申込方法
フォームにて登録いただくか、C-ENGINE事務局(contact[at]c-engine.org) までメールにて、①ご所属・お役職、②お名前、③メールアドレス、④ご希望の参加形態(現地参加/オンライン)を記載の上お申込みください。
プログラム
※内容は随時更新いたします
13:45 開場
14:15 開会のご挨拶
14:25 ご来賓挨拶
経済産業省
文部科学省
14:40 C-ENGINE活動のご紹介
14:50 研究インターンシップ参加学生報告(10分×2名)
15:20 基調講演
「イノベーションと文化の溝」
井上 章一 氏(国際日本文化研究センター 所長)
16:10 座談会
「イノベーションは心を豊かにできるか」
16:40 閉会のご挨拶
16:45 終了
※終了後、18時から情報交換会・交流会を開催いたします。現地にてご参加いただく方は是非こちらにもご参加ください(要申込・参加費5,000円)
講師紹介
国際日本文化研究センター 所長 井上 章一 氏

井上章一(いのうえ・しょういち)先生は、1955年京都市生まれの文化史研究者であり、現在は国際日本文化研究センター(日文研)の所長を務めています。京都大学工学部建築学科、同大学大学院修士課程で建築史・意匠論を学び、1980年に京都大学人文科学研究所助手、1987年に日文研助教授に就任。2002年に教授、2020年からは第7代所長として日本文化研究の拠点を牽引しています。井上先生の研究は、建築史にとどまらず、風俗や日常生活、さらには美意識や価値観の形成過程に広がり、日本文化における「ふつう」や「美」の成立を問い直してきました。『つくられた桂離宮神話』でサントリー学芸賞、『南蛮幻想』で芸術選奨文部大臣賞、『京都ぎらい』で新書大賞を受賞するなど、常に独自の視点で文化と社会の関係を描き出してきました。
日本文化が育んできた価値観や感性が、どのように新しい創造へと結びつくのか。井上先生独自の視点でとらえ直していただきます。
問合せ先
一般社団法人産学協働イノベーション人材育成協議会(C-ENGINE)
TEL 075-746-6872
Email contact[at]c-engine.org
※[at]を@に変えてください