イノベーションにおける『技術の軌道』形成~研究者コミュニティの役割~
量子技術は安全保障に影響を与える技術の一つとして世界の主要な国々で独自技術の開発が急がれ、その産業化や新産業創出に向けた様々な取り組みが行われている。日本では、量子技術に対する官民双方の注目・期待の高まりが比較的遅かったことで、量子エコシステムの本格的形成はこれからという状況である。半導体レーザーの開発において、1980年代に日本が世界的リーダーとなる過程について詳細な研究をされた清水先生に、量子技術を含めたイノベーション創出に必要な環境形成についてご講演いただく。
量子コンピューターは、材料の設計・開発などを通して世界をドラスティックに変革するポテンシャルがある。しかし、量子コンピューターの技術は量子力学の制御においてまだ発展途上にあり、一般にはほとんど理解されていない。そうした中、大阪大学の藤井啓祐先生が立ち上げたQunaSysが先導し、材料開発の第一線で活躍する国内研究者のコミュニティを形成、量子コンピューター教育と量子アルゴリズム・ソフトウエア開発を同時に進め、さらにはこれらの取り組みの海外展開も図っている。量子コンピューターなどの未踏領域における技術開発と人材育成の一体的取り組みは、知識のストックの増加と多くの優れた成果が期待でき、イノベーション創出の観点から非常に興味深い。量子技術という新たな領域において必要とされる人材の育成を産と学がどのように連携すべきか、こういった活動を通して量子技術イノベーションに向けたエコシステムの形成について議論したい。
主催:一般社団法人産学協働イノベーション人材育成協議会
後援:経済産業省、文部科学省
開催概要
日時
2024年11月12日(火)14:30-18:00 (開場14:00)
開催形態
現地会場・オンライン(Zoom)のハイブリッド開催
※現地会場は定員60名
現地会場
京都大学東京オフィス 大会議室 (東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング10階)
申込方法
フォームにて登録いただくか、C-ENGINE事務局(contact[at]c-engine.org) までメールにて、①ご所属・お役職、②お名前、③メールアドレス、④ご希望の参加形態(現地参加/オンライン)を記載の上お申込みください。
プログラム
※内容は随時更新いたします
- 開会挨拶
- ご来賓挨拶
経済産業省イノベーション・環境局イノベーション政策課大学連携推進室長 川上 悟史 様
文部科学省大臣官房人事課企画官(併)高等教育局学生支援課 澤田 和宏 様 - 基調講演 「汎用性の高い技術のイノベーション: どのように価値を生み出していくのか」
早稲田大学商学学術院 教授 清水 洋 氏 - 講演「量子人材を創出するエコシステム」
株式会社QunaSys Chemical Research Solution事業部長 高椋 章太 氏 - C-ENGINEについて
- C-ENGINE研究インターンシップ参加学生体験報告(2名)
- パネルディスカッション「イノベーションにおける『技術の軌道』形成と研究者コミュニティ」
- 閉会挨拶
※終了後、18時から情報交換会・交流会を開催いたします。現地にてご参加いただく方は是非こちらにもご参加ください(要申込・参加費4,000円)
講演概要
基調講演:汎用性の高い技術のイノベーション:どのように価値を生み出していくのか
早稲田大学商学学術院 教授 清水 洋 氏
汎用性の高い技術(ジェネラル・パーパス・テクノロジー(GPT)と呼ばれます)は、蒸気機関や電気、コンピューター、人工知能のように、さまざまな領域で用いられ、生産性を向上させ、経済成長を生み出してきました。量子コンピューターが注目されてきた理由の一つも、その技術の汎用性の高さにあります。このような汎用性の高い技術はどのように生み出され、どのように変化していくのでしょうか。
スピンアウトを促す社会制度が整備されると、このような技術の基盤的な研究開発が阻害されることが見られています。スタートアップによるイノベーションの生成が注目される中で、どのようにこのような汎用性の高い技術を社会的に育てていくのかは重要な課題です。国の役割、企業の役割を考えていきましょう。
また、研究開発競争が激しい領域では、技術開発は進むものの、企業は利益を出しにくくなります。それでは、企業にとってはどのような戦略が重要なのでしょうか。ここではボトルネックになっているところで価値が出るという点から企業の価値づくりについても考えていきます。
講演:量子人材を創出するエコシステム
株式会社QunaSys Chemical Research Solution事業部長 高椋 章太 氏
量子コンピューターを中心とした量子技術は、世界中で技術開発競争が加速しており、日本も例外ではありません。しかし、これらの開発を担う専門人材の不足が課題となりつつあります。米国を中心とする国々では、将来の需要を見越した教育や人材育成が進んでいる一方で、日本では将来の活用領域となる分野においても、技術の未確定性ゆえに将来を見据えた取り組みが十分に進んではいません。
この課題に対し、QunaSysは特に量子コンピューターの活用が早期に期待される化学分野を中心に、産業界の量子コンピューター需要創出を目指したコンソーシアムを運営しています。このコンソーシアムと連携し、文科省のQ-LEAP人材育成事業の一環として、学生がインターンとして産業応用のユースケースを探索し、産業界への働きかけと将来技術を担う人材育成を進め、経済的な活動につながるエコシステムの形成を目指しています。本講演では、これらの活動を通して見えてきた量子技術を取り巻く産業面および人材育成における課題を共有するとともに、今後の量子技術を取り巻くエコシステムのあるべき姿について議論したいと思います。
問合せ先
一般社団法人産学協働イノベーション人材育成協議会(C-ENGINE)
TEL 075-746-6872
Email contact[at]c-engine.org
※[at]を@に変えてください