指導教員に研究インターンをどう説明するか

研究インターンシップに興味はあるけど、多くの大学院生に立ちはだかる壁:

「指導教員に研究インターンどう説明すればいい?」

指導教員の研究インターンをどう説明するか
  • 研究が遅れることを指摘されたらどうしよう
  • アカデミアは諦めたと思われないだろうか
  • 前例がそもそもない
  • そういう雰囲気ではない

こうした不安を感じるのはとても自然なことです。

この記事では、研究インターンを、研究の脱線ではなく、研究の延長として説明するための考え方を整理します。是非参考にしてみてくださいね!

なぜ指導教員は研究インターンに慎重になるのか?

まず大切なのは、指導教員が慎重になる理由を理解することです。多くの場合、反対の背景には次のような懸念があります。

研究が遅れるのではないか?

博士課程の皆さんの最優先事項は、博士研究を遂行し、論文にすることです。研究の進捗が研究インターンシップに時間を割くことでうまく進まなくなってしまうのではないか、という心配は、指導教員としても自然なものです。博士号取得までの研究スケジュールをどのように考えているのかが見えないと、教員側は指摘せざるを得ないということになります。

論文につながらないのではないか?

研究インターンシップは企業で研究に従事するプログラムですが、そこでの成果は多くの場合企業に帰属することになるため、学位論文に使わせてもらえないケースがほとんどです。事前の取り決めによっては学生と企業側受入部門の専門性マッチングがうまくいき、博士研究の一環としてインターンを実施する例や共同研究につながる例もありますが非常に稀です。学位論文に繋がらない以上、教員としても教育的価値を判断しづらいということがあります。

就職活動を優先し研究を疎かにしているのではないか?

近年では、短期インターンシップと就職・採用活動の連携がさらに進んでおり、インターンシップへの参加自体が「研究より就職活動を優先しているのでは」という誤解を生みやすくなっています。

もちろん、大学院修了後のキャリアパス探索はみなさんにとって必要なことですので、大学院生みなさんの本分である研究活動への影響をうまく説明する必要があるでしょう。

一方で、アカデミアの研究者としての進路を希望している学生に対して、なぜ研究インターンシップに参加したいかその目的を理解いただけていないケースもあります。

企業による学生の囲い込みを不安視する教員も中にはいらっしゃいます。

安全・知財・責任の所在

企業の研究には、設備・安全・知財・契約など、考えられるリスクが大学という状況下とは異なるケースがあります。

ここで重要なのは、指導教員は学生の挑戦を止めたいわけではない、 ということです。むしろ、研究者としての成長につながるか、その経験を得ることが適切かどうか、を真剣に考えている場合がほとんどなのです。

研究インターンを「研究の延長」として説明する視点

研究インターンシップを説明するときに最も大切なのは、就活・経験・スキルではなく、「研究」に軸足を置くことだと思います。

研究テーマとの接続を示す

テーマが完全に一致する必要はありません。むしろ博士研究と非常に近しいテーマを見つけることは困難な場合が多いです。

  • 研究手法・アプローチに共通点がある
  • 課題設定の考え方が近い
  • データ解析・モデル化の方法が活かせる

など、ご自身の研究経験との接続性について考えてみると良いと思います。この視点は、どのテーマに応募しようか検討するときにも役立つ考え方です。

「研究テーマを変える」のではなく、「研究テーマを別の環境で検証してみる」という説明ができれば、研究の延長としての研究インターンシップ参加の意義を理解していただけるでしょう。

得られるのは「スキル」だけでなく「研究の視野」

研究インターンシップでは、いつも取り組んでいるテーマとは少しことなることにチャレンジされるケースが多いので、新しい手法や研究スキルを習得する機会にももちろんなるのですが、得られるものは単なる実務スキルというよりも

  • 仮説の立て方の違い
  • 制約条件下での研究の進め方とその思考
  • 社会実装を意識した課題設定

といったあなたの研究力そのものを底上げするような経験です。

特に上記のような視点は、博士研究をあなた自身が客観的に見直す力にもつながります。研究者としての思考がまさに鍛えられる機会なのだということを強調するといいでしょう。

期間・関与度・研究室への影響を具体化する

曖昧さはしばしば不安をあおります。

  • どれくらいの期間行きたいと思っているのか
  • 研究の進捗に対し、どのように考えているか
  • ゼミには出れるのか、定期報告はあるか

などを事前に整理して、指導教員に相談し、研究インターンシップに参加してもよい条件を決めるのもひとつの手です。

C-ENGINEの研究インターンシップは、みなさんの博士研究に支障が出ないよう、企業側へ柔軟な対応を要請しています。週1回のゼミへの出席、学会への参加、論文対応のための時間確保など、いろいろなケースにご対応いただいた実績がありますので、気になることがあれば一度大学コーディネーターに相談してみるといいでしょう。

実際に使える説明フレーズ例

具体的にどう説明する!?と言葉選びに困った際には、以下のような表現を参考にしてみてください。その上で、是非ご自身の言葉で説明できるように準備しましょう!

研究重視型

C-ENGINEの研究インターンシップは、テーマを選んで応募できるので、現在取り組んでいる研究テーマと関連する課題に応募したいと思います。企業の研究環境で取り組んでみて、仮説検証の視点を拡げたいと考えています。

視野拡張型

企業での研究開発は、大学での研究とは異なると聞いています。企業での研究の進め方や課題設定の違いを体験し、自分の博士研究をより客観的に見直せるようになりたいと考えています。

教育価値協調型

将来、研究者としてキャリアを構築してきたいと思っています。研究者として社会とかかわる上で、研究成果の位置づけや効果的な伝え方を学べると考えています。

指導教員が安心する「補足情報」の出し方

説明の際には、次の点を補足できると効果的でしょう。

大学・企業・学生の三者共を考慮したプログラムであること

C-ENGINEの研究インターンシップは、大学・企業・学生それぞれがWin3の研究インターンシップを推進しています。大学公認の教育プログラムであることは、ひとつ安心につながるのではないでしょうか。

研究インターンシップ実施契約を大学・企業間で締結すること

大学の教育プログラムの一環として実施していただいていますので、実施の際には大学・企業間での契約を締結し、インターンシップの実施にあたっての責任の所在、知財・秘密情報の取扱いも含めてその中で取り決めた上で実施します。

経済産業省・文部科学省も関わるプログラムであること

C-ENGINEはもともと経済産業省補助金事業として、2014年1月から研究インターンシップ推進に取り組んできました。経済産業省・文部科学省ともに、当時からご指導いただきながら本活動をブラッシュアップしています。中長期の研究インターンシップの教育的効果が高いことや、今後の博士人材活用の鍵となることも謳われています。

(参考)「博士人材の民間企業での活躍促進に向けたガイドブック」でも、博士学生向けのインターンシップが、産業界と連携した人材育成、キャリア教育の一環、アカデミアに限らない多様なキャリアパス開拓や視野の拡大に有効な取り組みであるとされ、C-ENGINEの取組みについてもご紹介いただいています。

もしも反対されたなら

もし否定的な反応が返ってきたとしても、慌ててはいけません!即NGだったとしても、「永続的な否定」とは限りません。

  • タイミングの問題
  • テーマ設定の問題
  • 研究室の事情・研究進捗の事情

など、理由を冷静に分析してみて、期間や内容を調整することで再提案の余地がないか考えてみましょう。

研究インターンシップの相談を1度で終わらせる必要はありません!

研究インターンは「指導教員との関係を壊すもの」ではない

研究インターンシップに参加することで、指導教員との関係悪化を恐れる方もいるかもしれません。ですが、いつもいる研究コミュニティの外に出て活動することで、

  • 研究の説明力が上がった
  • 研究の位置づけを言語化できるようになった
  • 研究者としての自信につながった
  • 指導教員との議論が深まった

ということに直結します。特に研究インターンでは、大学での研究以上により様々な人との協働をしなければなりません。そうしたメリットがあることをしっかり指導教員にも自分で説明することが重要です。結果的に指導教員との議論ー博士研究に関することも、そうでないこともーをより深めることにつながるでしょう。

研究インターンシップの経験は、参加した皆さんの研究者としての自立を促す経験でもあるのです!

まとめ|大切なのは「研究者としての意図」を言葉にすること

研究インターンシップは、一人前の研究者になるための研究経験をつむ一つの方法に過ぎません。普段とは異なる環境で、あるテーマに取り組む経験は、自分自身の可能性を拡げ、その後の大きな成長につながると考えています。

もちろん、大学院生としての貴重な時間を、本当に研究インターンシップに費やしていいのか?という不安、博士研究を一時的にストップさせないといけない不安、本当に今後に活かせるかどうかという不安は、皆さん自身が一番持っていると思います。

研究インターンシップをどう説明するかは、研究者として自分の意図を整理する作業でもあります。

  • 研究の延長として研究インターンシップを位置付けてみる
  • 教育的価値・成長ポイントを言葉にしてみる
  • 不安を前提に、具体的な説明を心がける

まずは、皆さん自身が、「なぜ研究インターンシップに行きたいのか」を言語化してみるところから始めましょう。

この記事が、皆さんが少しでも自信をもって研究インターンシップ参加の目的や熱意を伝えるための準備の一助となれば幸いです!

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