研究インターンに行って、研究は遅れないだろうか?ー博士学生が向き合うべき、正直な話

研究インターンに関心はある。
でも、頭のどこかでずっと引っかかっている問いがある。
「研究インターンに行って、研究は遅れないだろうか?」
この問いは、とてもまっとうです。
博士課程において、研究の遅れは単なる不安ではなく、修了時期・論文・将来に直結する現実的な問題だからです。
この記事では、「研究インターンに行くと研究は遅れるのか?」という問いに、
きれいごとではなく、構造的に 向き合います。
結論から言うと、遅れることもある。でも、それ以上のメリットが得られるかも!!!
最初に、結論をはっきり言います。
研究インターンに行けば、博士研究が遅れる可能性はあります。
この事実を否定はしません。
ですが、実際に研究インターンに参加した学生の声を見ると、参加してよかった、という声が絶えないばかりか、むしろ研究が加速したといった声も少なくありません。
重要なのは、その研究の「遅れ」が
- どんな種類の遅れなのか
- どんな場合に起きやすいか
- それが本当に「悪い遅れ」か
これを分けて考えることです。
博士学生が感じる研究の「遅れ」とは
まず、多くの博士学生が感じる研究の「遅れ」には、いろいろなケースがあります。
1. 実験や解析の時間が物理的に減る
これは最もわかりやすい「遅れ」です。研究室を離れる以上、研究のために手を動かす時間は確実に減ります。
この点に関しては、研究インターンに行けば遅れます。はっきり認めるべきポイントです。

2. 研究のリズムが一度リセットされる
研究は、①問題意識、②仮説、③試行錯誤を連続して積み重ねていく活動です。研究インターンに行くことで、そのリズムが一度途切れてしまうことを恐れる人もいるでしょう。これもまた、現実です。
3. 研究への集中度が一時的に下がる
研究インターンに行くということは、新しい環境、新しいテーマ、人間関係をゼロからスタートするようなもの。
慣れるまでにエネルギーを使い、自分の研究に割ける思考リソースが減ることもあるでしょう。
ではなぜ「研究が進んだ」と感じる人がいるのか
一方、研究インターン経験者の中には
「むしろ研究が進んだ」
「戻ってから加速した」
と話す博士学生も少なくありません。
これは、矛盾ではありません。
矛盾に感じてしまう理由は、
研究の「量」と「質」と「方向性」が、一緒くたに語られがちだからです。
研究インターンが博士研究の「質」に与える影響
研究インターンでは、研究の正しさよりも、次のような問いが繰り返されることがあります。
- なぜその問いを立てたのか
- どこが本当に難しいのか
- 何が分かれば前に進めるか

この過程を通して、多くの博士学生が、
- 仮説の立て方を見直す
- 研究のゴールを再定義する
- 重要でない作業を手放す・優先順位を明確にする
ようになります。
その結果、戻ってからの研究の密度が上がるということが起きるのです。
研究から一度離れることで、見えるものがある

研究インターンの期間、博士学生は自分の研究テーマから、物理的にも心理的にも少なからず距離を取ることになります。
この「一度離れる」という状態は、研究の連続性という点では不利に見えるかもしれません。
しかし多くの場合、この距離が研究を俯瞰的に見る視点を生み出します。
- これまで当然だと思っていた前提に疑問を持つようになる
- なぜこのテーマにこだわっているかを考え直すことができる
- 研究の全体像を、少し引いた位置から見られるようになる
研究に没入していると、こうした視点はなかなか得ることができません。

また、研究インターンの気分転換としての効果も無視できません。
研究の行き詰まりや、同じ問題を長く考え続ける疲労状態から一時的に離れることで、研究への向き合い方がリセットされることがあります。その結果、
- 別の切り口がふと思い浮かぶ
- これまで思いつかなかった問いが立つ
- 研究の優先順位を整理できる
といった変化が起きることも珍しくありません。
つまり、決して研究をさぼっていることにはならないのです。
むしろ、研究を続けるための思考のメンテナンスをおこなっていると言えるでしょう。
研究インターンで研究が本当に遅れやすいケース
場合によっては、研究インターンで博士研究から一時的に離れることが、「悪い遅れ」につながる可能性もあります。例えば以下のケースでは注意が必要です。
実験依存度が非常に高い研究
長期・連続的な実験が不可欠な場合、タイミングを誤ると、その影響は大きくなってしまうでしょう。中長期の研究インターンシップにこだわらず、無理の無い範囲で外との交流・経験ができる機会を探すのが吉です◎
研究テーマとの接続が弱すぎる場合
インターンで取り組むテーマと、自身の博士研究の間の思考的接点がほとんどないと、「分断」となってしまうケースがあります。テーマの完全一致はもちろん難しいですが、手法・アプローチ、問いの立て方など、何かしらの接点をあらかじめ言語化できることは重要です。
事前調整がほとんどできていない場合
特に指導教員とのコミュニケーション不足等があると、戻った後の復帰・再接続に時間がかかってしまう可能性があります。指導教員とは必ずよく相談した上で参加を決めましょう。
研究を「遅らせにくく」するための考え方
研究が遅れることを心配するよりも、いかに研究を遅らせにくい形で研究インターンに行くかを考える方が建設的です。
そのためには、
- 自身の研究テーマとインターンテーマの接点
- 期間を明確に区切る
- 研究室での研究の再開までの計画
これらが整理されていればいるほど、「悪い遅れ」は起きにくくなります!
研究インターンに参加する目的と意義を自身の言葉で明確化し、博士研究の計画の中に、研究活動の一部として組み込むことが重要です。
研究インターンは「単に研究時間を削る」経験ではない
研究インターンを、「研究時間を削って別のことをする」と捉えてしまうと、遅れの不安は消えません。
別の見方をすると、研究インターンは、
研究をどう進めるかを考え直すために、時間を使う経験
だとも言えます。
この視点を持てるかどうかで、インターン後のご自身の研究の姿は変わってくるでしょう。

博士課程という時間を、少し長い視点で見てみる
博士課程の3年間だけを見ると、たとえ1か月でも、研究から離れることを「損失」と感じる人もいるかもしれません。
一方で、研究者としてその後30年、40年と研究に関わっていく時間を想像すると、
研究の視野を拡げたり、異なる研究文化に触れたりできるタイミングは、実はそれほど多くないことにも気づくでしょう。
アカデミアに進む場合
ポスドク期には成果を強く求められる場面が増え、
教員になってからも、研究以外の業務が増えていきます。
企業に進む場合も、
配属された組織の中で役割を担いながら研究を進めることになり、
自身の関心だけでテーマや環境を選べる自由度は徐々に小さくなっていくでしょう。
もちろん、例外はあります。
ただ、多くの人にとって、博士課程は、比較的自分の意思で時間の使い方を考えられる、貴重な期間でもあります。
研究インターンをどう捉えるかは人それぞれですが、
博士課程という時間を、研究を進めるだけでなく、研究との向き合い方を考える時間として使う、という見方をしてみてもいいのではないでしょうか。
まとめ|研究が遅れるかどうかではなく、「何が変わるか」を見よう
研究インターンに行けば、研究の進捗は一時的にストップします。それは事実です。
ですが、本当に問うべきは、
「遅れるかどうか」ではなく、「どんな研究者に変わるか」。
- 問の立て方
- 研究の優先順位
- 研究との向き合い方
これらが変わることで、あなたの研究は結果的に驚異的な展開につながるかもしれません。
研究インターンを、研究を止める経験として捉えるのではなく、
研究を見直し、研究者として成長する機会として捉えてみませんか?

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