
⑦受入れ研修の実施
初日に伝えるべきこと
受入開始時には、学生に対して、業務・研究内容だけでなく、「この場でどう動けばいいか」を理解してもらう必要があります。
初日~初期段階で伝えておくとよい内容
✔ 研究テーマの背景と位置づけ
✔ このインターンで期待していること
✔ どこまで自由に提案いてよいか
✔ 日々の連絡方法
✔ 相談タイミング
✔ 報告の頻度・形式
✔ 出社・オンライン時のルール
✔ 守秘・情報管理のルール
✔ 許可されている行動の範囲・制限事項
✔ 困ったときの連絡先
特に、学生は企業の研究現場の【当たり前】を知らないことがほとんどです。どの程度の粒度で報告すればいいか、どの段階で相談してよいか、完成してから見せるべきか、などで迷いがちで、報告が遅れることがあります。
そのため最初に、「遠慮なく途中経過を相談してよい」「わからないことは早めに聞いてよい」というメッセージを伝えていただくと互いに進めやすくなるでしょう。
事前学習・導入課題
実施テーマや、学生の専門分野・スキル一致度によっては、受入開始前に、論文や資料の事前読み込み、使用ツールのインストール・操作確認、予備知識の確認、簡単な調査課題などを依頼したい場合もあるでしょう。
実施までに時間がある場合や、インターン実施期間が比較的短期である場合、こうした事前学習・導入課題は有効です。一方で、あまりに負担の重い事前課題を課してしまうと、学生自身の大学での研究活動に影響を及ぼしインターン参加前から負担感を持つことに繋がります。
そのため、事前学習を設定する場合は、
- 比較的短時間で取り組めるもの
- 読んでおくと初回理解が容易になるもの
など、最低限の負担で導入がスムーズになる程度の課題にとどめるのが推奨されます。
本来博士学生は、学習能力が高かったり、知識習得の貪欲さがある人が多いですので、ある程度の期間が確保されている場合には、事前学習や導入課題は設定せずとも特に問題は無いと思われます。
開始前の不安は可能な限り見える化し解消
受入開始前は、企業側も学生側も少なからず不安を抱えています。
例えば企業側では、この計画でうまく進められるか、学生にどこまで任せていいだろうか、戸惑わせないだろうか、などの不安があるでしょうし、学生側でも、ちゃんと貢献できるだろうか、準備は滞りないだろうか、研究室を離れて大丈夫だろうか、といった不安を抱えているでしょう。
「不安があること自体は自然」と捉え、できるだけ言語化・共有することが重要です。
特に、まだ曖昧な点、後から決めること、最初は試しながら進める、などを率直に共有することで、過度な緊張や誤解を減らすことは可能です。
最初から完全に設計されたプロジェクトである必要はありません。開始前にすべてを決めきるのではなく、学生を一研究者とみなし、話しながら調整できる関係づくりをぜひ意識してみてください。
⑧インターンシップ実施
学生への伴走とは
研究インターンが始まると、企業担当者として、どこまで任せればよいか、どこまでフォローすべきか、といったことで迷いが生じるかもしれません。
任せきり:テーマだけ渡してほとんど対話せず一人で進めてもらう
抱え込み:毎回細かく指示しすぎて、学生が主体的に考えにくくなる
といった極端な対応にならないようご注意ください。
C-ENGINEの研究インターンシップでは、「伴走型」を基本としています。これはつまり、方向性の共有、定期的な確認、困ったときに相談しやすい雰囲気、必要な時に軌道修正、学生自身が主体的に考える余白を残す、という形を保ち進められることです。
初期:「立ち上がり支援」を意識
研究インターンシップ序盤(1~2週間目)は、学生にとって最も不安が大きい時期で、テーマの背景理解や社内の雰囲気、相談の仕方や報告のタイミングなどがまだつかめていない状態です。そんな時に最初から高い自律性を求めると、学生側では動きづらさを感じてしまう可能性もあります。
そのため、開始直後は丁寧に、「何を理解できればよいか」「最初の1週間でまず目指す目標」「どの時点で相談してほしいか」「途中で迷った際に戻るべき基準点」などを伝えるのが有効です。特に初期段階では、進捗よりも、理解のずれがないかを見ることが重要です。
定期的な確認の場を設けよう
研究インターンシップでは、学生が自律的に研究を進める余地をもたせつつも、定期的な確認の場をテーマや実施形態等に合わせて設定いただくことを推奨しております。
例
▶週1回の進捗確認ミーティング
▶2週間に1回のレビュー
▶毎回出社時に声がけ・簡単な口頭確認
▶オンライン時の定例ミーティング
確認の場では、単に進捗を確認するだけでなく、今何を考えているか、迷っているポイントがあるか、どれが仮説でどれが事実か、次に何か試そうとしていることはあるか、といった点を聞くと、学生の思考が見えやすくなるでしょうし、適切な軌道修正も可能となります。中には思わぬ発見などが生じることもあるかもしれません。
完成された成果だけでなく、学生本人がどのように考えて研究を進めているかを理解することは、企業側でも博士人材の価値を知る第一歩となると考えています。
途中経過報告を歓迎する雰囲気づくり
学生自身、ある程度固まってから指導教員に相談するという形でこれまで研究を続けている人も多く、「中途半端な状態で見せてはいけないのでは?」「もっと整理してから相談すべきでは?」「初歩的なことを聞くと迷惑では?」と遠慮しがちなケースも多いです。
しかしながら、研究インターンシップでは、企業の研究開発現場を完全に理解しているとは限らない状況下、限られた期間で研究を進めるため、途中経過を早めに共有した方が、結果として良い方向に進みやすくなると言えるでしょう。
そのため受入企業担当者が、
- 仮説段階でも共有してよい
- 迷っている段階で相談してよい
- 完成前のラフな資料でもよい
- わからないことは早めに聞いてよい
ということを繰り返し伝えることが有効です。これにより、ミスや行き違いを早い段階で見つけて、軌道修正をしやすくすることに繋がります。
大学の研究活動との両立への配慮
研究インターンシップに参加する学生は、その多くが、インターンシップに参加するために一定期間企業での研究にできる限りフルコミットできるよう、大学での研究活動を整えて参加しています。ですが、研究段階や研究室の方針等で、インターンシップ期間中であっても学会やゼミ、論文対応等を並行して進めなければならないこともあります。
- 学会やゼミの参加については、実施前に確認し、可能な範囲で柔軟なご対応をお願いいたします。
- 論文については、例えば参加前に論文を投稿した場合に、インターン実施中に査読結果が返ってくるケースがあります。その場合、学生はインターンシップと査読対応を並行で行わざるを得なくなるという状況が発生します。
インターン生の中には大学のことを相談しづらいと考える学生も少なからずいると思われます。学生の様子や変化には十分ご留意いただき、場合によっては計画変更等も含めた柔軟な対応をお願いいたします。
懸念点等が出てきた際は、大学側から対応させていただく方がうまく対処できるケースもあるかもしれませんので、遠慮なく大学コーディネーター等にご相談いただくようお願いいたします。
進捗がうまくいかないとき
インターンシップ実施中の研究進捗が思ったより進んでいない時には、学生の理解力や主体性、専門分野の一致度に原因を求める前に、以下の点を再検討してみてください。
- テーマ設定が広すぎた/曖昧だった
- 到達イメージが共有できていなかった
- 学生がうまく相談できない状況だった/相談のタイミングが分からなかった
- 必要な前提情報の共有が不足していた
- 担当者との接点が少なすぎた
こうした設計やコミュニケーションの問題であるケースもあるかもしれません。
目標設定や課題、制約条件などで認識にズレがないか。どこでストップしているか。何が不足しているか。どうすれば動きやすいか等を確認し、必要に応じた再設計が求められます。
実際にあった例として、シミュレーションを行う際に、学生側はその精度にこだわっていたが、実際に求められる精度としては十分であり、企業側の目的としてはもっと別のものがあることを学生側が理解することで、研究のアプローチを最適化できたという事例もあります。
企業側にとっても「学び」がある
研究インターンシップの学生に対する教育的効果は非常に大きいものですが、企業側にとっても実は「学び」があります。
学生がどのようにテーマを捉えているか、どこで躓きやすいか、どんな点に魅力を感じているか、博士人材の強みがどこに現れるかを知る機会であるのはもちろんですが、実際には研究インターンシップの成果として
- リソースがなく手をつけられなかったテーマに進捗があった
- 想定外の視点・アプローチにより大きく進展した
- 社内では当たり前すぎて言語化できていなかったことに気づけた
- 若手社員が担当者となることで成長につながった
といった報告もいただいています。
研究インターンシップは、学生の成長機会であると同時に、企業側の受入知見の蓄積機会でもあり、さらに研究開発推進にもつながる機会であるという点は、是非知っておいていただきたいと思います。
困りごとは早めに相談してください
どれだけ入念に準備をおこなったとしても、実施中のトラブルを100パーセント回避できるとは限りません。
学生に連絡がとれなくなった、コミュニケーションがどうしてもうまくいかない、学生の研究室との調整が必要になってしまった、実施条件を変更したい、等、何か気になることがあれば、企業側で抱え込まず、大学コーディネーターやC-ENGINE事務局に早めにご相談ください。
特に大学側で、学内手続き関連はもちろん、学生の状況(本人の性格や、指導教員との関係、本人が言いにくい事情など)を把握しているケースもあります。第三者が介入することで解決しやすいケースもあるかもしれませんので、ぜひお気兼ねなくご連絡をいただければと思います。週報・月報の共有も互いの状況の共有に有効です。
⑨成果報告会・報告書提出
成果報告会は「互いの学びを共有する場」
研究インターンシップ終了後は、是非可能な範囲で、成果報告会の開催をお願いいたします。研究インターンシップ終了後に、振り返り・報告の機会を設けることで、そのインターンシップが企業・学生・大学にとってどのような意味を持ったのかが整理され、次につながる価値を共有できます。
研究インターンシップの価値は、必ずしも大きな成果だけで決まるものではありません。
限られた期間の中で、学生がどんな問いに向き合い、どのような試行錯誤をし、何が明らかになり、何が課題として残ったか、そして企業・学生がそれぞれ何を学んだかを整理することで、十分に意味のある取組みとなります。
企業としても、どのような過程で進んだかを理解し、研究テーマの今後の展開を共有する機会となる上、社内での博士人材との取組の可視化の機会ともなります。
成果報告会を開催いただく際は、大学コーディネータや学生の指導教員の参加を是非ご検討下さい。その際には、学生の指導教員にも研究室の研究紹介等をしてもらうというのも、研究交流のきっかけづくり・今後の関係深化につながります。
成果は「最終結果」だけではない
研究開発の現場では、短期間で劇的な成果が出るとは限りません。研究インターンシップも同様に、成果を「完成した技術」「明確な実験成功」「大きな発見」だけで捉えてしまうと、多くの価値を見落としてしまいます。
関連文献や技術情報の整理ができた、論点や課題構造が明確になった、仮説や選択肢が整理された、今後の実験・検証方法ができた、既存テーマの再整理ができた、「この方向性では難しい」ということがわかった、今後検討すべき事項が明確になった
といった事柄も、十分成果と言えるのではないでしょうか?
「何が完成したか」だけでなく、「何を前に進めたか」に注目していただければと思います。これは企業側が学生を評価するためだけでなく、自社研究テーマや受入設計を振り返る上でも重要な視点です。
評価報告書で「フィードバック」をお願いします
研究インターンシップ終了後、通常は企業の皆様に、評価報告書の作成・提出ご協力をお願いしております。C-ENGINE様式として、「評価報告書」「RISEスキル申告シート」へのご対応をお願いしておりますが、大学の単位認定等の関係で大学独自様式での提出が求められるケースもございますので、様式についてはあらかじめ大学コーディネーターにご確認ください。
評価報告書では、単なる採点・優劣判定ではなく、研究インターンシップにおいて発揮された学生の強み、印象的だった姿勢・態度、今後伸ばしていくとよい点、企業側として感じた可能性等をぜひフィードバックいただくようお願いいたします。
特に、以下の様なポイントには是非言及ください
✔ 課題の理解の仕方
✔ 情報整理や文献調査の進め方
✔ 仮説構築や論点整理力
✔ コミュニケーションや相談の仕方
✔ 議論姿勢・フィードバックを受けて改善する姿勢
✔ 新しい分野への適応力・対応力・応用力
✔ チームワーク、一員としてのかかわり方
学生にとっては、今後の研究活動の進め方やキャリアパス構築に対する考え方、自己研鑽の方向性などに大いに参考になるほか、企業側にとっても、どういった博士人材と相性がいいか、整理する手がかりとなります。
RISE評価:見えにくい力の言語化にご活用ください
評価報告書とは別に、企業担当者の皆様には、インターン生の活躍ぶりを見て、その学生の研究者としての能力・態度・姿勢について、「RISE申告シート」による向上度評価とコメントをお願いしています。
RISEとは
C-ENGINEでは、一人前の研究者になるために必要な素養・トランスファラブルスキルを4分類計12項目に言語化し、大学院生の皆さんが自身の能力の棚卸し・自己研鑽にご活用いただけるよう、RISEスキルセットを公開しています。RISEは、履歴書や研究実績書だけでは表しにくい自身の強みの言語化に役立ちます。
研究インターンシップでは、学生が特に伸ばしたい、発揮したいと考える3つのスキルを「RISE申告シート」で企業担当者に事前に申告します。インターンシップ前後での学生の変化について、向上度という形で評価いただき、また今後のアドバイスコメントをお願いできればと思います。(いただいた向上度評価とコメントは、研究インターンシップ評価証明書として学生にフィードバックさせていただきます。
企業側としても、成果物が限定的だったがよい問いの立て方をした、短期間で必要な情報を整理する力が高いのを感じた、周囲とよくコミュニケーションをとり進め方を改善できていた、などといった点を可視化いただくことで、研究インターンシップを成果物だけでなく多方面から立体的に評価することが可能になります。ぜひご協力をお願いいたします。
終了後に振り返っておきたいこと
研究インターンシップ実施後は、ぜひ受入企業側でも簡単の振り返りをおこなうことを推奨しております。特に以下のような次回以降の実施の改善につながりそうなポイントについては、ぜひ実施後に整理いただければと思います。
- テーマ設定の適切さ
- 学生に期待する役割は明確だったか
- 実施時期・期間に無理はなかったか
- 受入担当者(現場担当者)の伴走の頻度やかかわり方は適切だったか
- 学生に伝わりにくかった点はあるか
- 学生との相性について
- 次回実施する上で考慮したいこと
研究インターンシップの受入は、一回ごとに学びが蓄積されます。終了後の振り返りをおこなっていただくことで、次回以降の受入はより実施しやすくなります。
なお、C-ENGINEプログラム上の問題点等、お気づきの点、コンソーシアム全体で解決すべき点については、是非C-ENGINE事務局までご共有いただけますと幸いです。
インターン実施により構築された関係について
研究インターンシップ終了は、必ずしも互いの関係の終了とイコールとは限りません。場合によっては、学生が別の機会に企業イベントへ参加したり、成果報告会をきっかけに指導教員との繋がり・研究交流が生まれたり、他の学生紹介につながる事例など、関係が継続・発展することがあります。
C-ENGINEでは、研究インターンシップを単発の受入機会として捉えるのではなく、企業と大学、企業と学生が中長期的に関係を築いていく入口として捉えています。特に学生は、就職先を決める際にインターンシップ先を検討する可能性は高いですし、アカデミアに残った際には共同研究先になり得ます。関係構築・ネットワーク拡大に研究インターンシップを活用いただくことを、C-ENGINEは歓迎しています。
お問い合わせ
C-ENGINE事務局では は常に役に立つコラボレーションをお届けし、会員企業の皆さまよりのご相談をお受けしております。 研究型インターンシップ、その他どのようなことでもお尋ねになりたいことがございましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。
