博士学生が就活で陥りやすい誤解|『研究テーマがマッチしないと就職できない』は本当?
研究インターンシップの参加先企業や、今後の就職先候補を考えるとき、博士研究にしっかり取り組んできた皆さんは、
「せっかくなら自分の専門性が活かせるところに行きたい」と考える人も多いと思います。
一方で、「自分の研究テーマに関係がある企業にしか行けないのでは?」「自分の研究テーマに興味を持ってもらえそうな企業が見つからないなあ」といった悩みもお持ちかもしれません。
例えば…
- 材料工学だから材料メーカーじゃないと無理?
- 生物学だから製薬会社?
- 数学なら金融?
というように、研究分野やテーマと就職先を一対一で考えてしまう人は少なくありません。
しかし実際には、博士課程修了者はさまざまな業界で活躍しています。なぜ「研究テーマがマッチしないといけない」と感じてしまうのでしょうか。
実は、「専門が違う」ことよりも「お互いを知らない」ことが課題

2024年2月に経済産業省主導で「博士人材の産業界への入職経路の多様化に関する勉強会」の議論とりまとめ資料でも取り上げられている通り、博士人材と企業との接続における大きな課題のひとつが
博士人材と企業のミスマッチ です。
このミスマッチは、「企業に博士ニーズがない」という単純な話ではありません。
例えば企業側では、
博士人材を採用したい部署がある▶しかし人事までニーズが届いていない▶博士学生とどうマッチングすればよいかわからない
という課題もありますし、学生側もまた、
自分の専門が活かせる企業を知らない▶企業研究職以外の働き方を知らない▶専門以外でも活躍できることを知らない
という課題があります。
つまり、「専門が違うから採用されない」のではなく、お互いを知る機会が少ないことが、ミスマッチを生んでいるのです。
あなたの「専門性」は、研究テーマだけではありません
いきなり何を言っているんだ?と思われる方もおられるかもしれませんが
「あなたの専門は何ですか?」と聞かれた時、多くの人は研究テーマや分野を答えます。
例えば、「リチウムイオン電池の負極材料を研究しています」「タンパク質の立体構造解析をしています」
もちろん、それは間違いではありません。
しかし、その研究を進めるうちに身に着けた力は、それだけではないはずです。
たとえば、
①研究対象に関する知識
②研究のための手法(解析手法、シミュレーション技術、データ解析、統計処理、プログラミング、測定技術など)
③研究の進め方(仮説構築、実験設計、データ解釈・考察、プロジェクト推進など)
といった、研究テーマを越えて活用できる知識や技術も身につけています。
つまり、研究テーマはひとつでも、あなた自身が今後活かしていける専門性は、ひとつとは限らないのです!
企業が見ているのは「研究対象」より「研究の進め方」
企業研究者と話をする、例えば面談等で聞かれる内容は、意外と共通していたりします。
- なぜそのテーマを選んだのか
- どんな壁があり、どう考え、どう乗り越えたか
- 仮説が外れたり、進捗がうまくいかない時にどうしたか
企業が知りたいのは、「どんな研究をしているか」だけでなく、「どのように研究を進めたか」なのです。
未知の課題に向き合い、自ら考え、試行錯誤しながら成果に繋げる力は、研究テーマが変わっても活かせるからです。
「この会社は専門が違う」と決めつけるのはもったいない!
実際のところ、一見すると専門が違うようなところに就職するケースもあると言います。その場合、先ほど述べたような、総合的な研究力、研究を通して培った広義の「専門性」で評価されていると言えます。

また、研究室での経験を通して、
- 課題設定力
- 仮説検証力
- プロジェクト推進力
- 他社と協働する力
を身につけている人もいらっしゃると思います。こうした力もまた、企業が高く評価するポイントです。
だからこそ、企業を知ることが重要!
先ほどの「博士人材の産業界への入職経路の多様化に関する勉強会」で共有された情報として、博士学生の中に実際に以下のように感じている人が少なくないことが報告されています。
- 自分の分野で募集している企業がわからない
- 就職活動の方法が分からない
- キャリアに関する情報が少ない
知らない企業が選択肢に上がることはありません。
企業側もまた、みなさんの専門性や研究経験の価値を十分理解できていないことがほとんどです。
だからこそ、企業研究者と話したり、研究インターンシップに参加することで、「この企業でも自分の経験が活かせるんだ」という発見が生まれると同時に、あなたが活躍できることを企業側に理解してもらうことができるのです!
研究テーマではなく、「解決したい課題」で企業を見てみよう
企業を探すときは、実際に研究開発部門で取り組まれているテーマを見るだけでなく、
その企業がどんな課題解決に挑戦しようとしている企業なのか
を見てみることをおすすめしています。
例えば、画像認識の研究をしている学生であれば、自動車、医療、製造、ロボティクスなど、多くの分野でその知識や経験を活かせます。
流体解析であれば、エネルギー、空調、半導体、化学プラントなど、活躍できるフィールドは決してひとつではありません。
また、企業では、どんな課題を解決しようとしているかによって、短期~長期計画で、その目標に向かって最適な活動を実施する上で、研究テーマだけ見ていても、皆さんご自身の方向性と合わなくなってくることもあるかもしれません。
研究テーマだけでなく、「自分はどんな社会課題の解決に貢献したいか」
そしてそれが一致する企業を探す、という視点をもつことも、キャリアの可能性を拡げる一つのポイントとなるでしょう。

まとめ
ここまで話してきたとおり、博士研究で取り組んでいるテーマに縛られすぎる必要は全くありません。ここを誤解したままでいると、自ら、知らず知らず選択肢を狭めてしまっているかもしれません。
実際に、博士人材と企業の間には、お互いを知る機会が少ないことによるミスマッチがまだまだ存在しています。
企業が見ているのは、研究テーマそのものだけでなく、
- 研究をどのように進めたか・そのプロセス
- 研究を推進する上で身につけた能力・技術
- 未知の課題にどう向き合ったか、向き合い方の姿勢や工夫
という「研究者としての力」です。
自分が博士研究を進めていく中で培ってきた力や、解決したい課題に共感できるか、という視点で見てみると、これまで気づかなかったキャリアの可能性が見えてくるかもしれません!
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