【デザイン】x【ロジック】のコツをつかむ ”ポスター・スライド作成術セミナー”を開催しました。 

 研究者の必須スキル:研究プレゼン。研究を聞き手に理解しやすく伝えるプレゼンは、専門的な内容を科学的に正確に伝えつつ、その研究の魅力を相手に共感してもらうために必須です。

 2023年3月3日(金)16:00~17:30に、ZOOMによるオンライン開催にて、 分野外の人にもわかりやすく伝えられるよう、研究プレゼンについて一緒に学びたい方を対象に、「伝わりやすい発表の特徴は何か?」「伝わるプレゼンをするのにどんな工夫ができるか?」といったポイントに焦点を絞り、プレゼン作りのコツをレクチャーし、学生が実際に作成したポスターやスライドの添削前・添削後を比較しながら、資料作りのご相談にお答えしました。

セミナー当日の発表資料と動画視聴リンクを本セミナー申込者限定で配布しております。セミナー参加申込者で未だ配布されていない方は、お手数ですがC-ENGINE事務局までメールにてご連絡をお願いいたします。(2023/5/31まで公開)

講師:大西真駿 氏
[ドイツ]マックスプランク老化生物学研究所 博士研究員

 学生から事前提出いただいたスライド事例では、文字を減らす工夫や、図を大きめに配置し、単語の数は最小限にして、文書の中からキーワードをピックアップして表示するなど、以下のように具体的な修正が行なわれました。

 また、今回のセミナーでは、修士・博士学生のみならず、教員や研究員の方々を含め総勢156名のご参加により、多くの方にご質問をいただきました。以下、一部をご紹介いたします。

Q1:スライドは、一般的にタイトル・メッセージ・ボディで構成されると思うのですが、大西さんのスライドにはいわゆるメッセージ部分がないような気がします。なにか意図があるのでしょうか。

A1:今回お見せしました自分のスライドの例では、「タイトル・メッセージ・ボディ」の構成を完全に反映させたものが少なかったかと思いますので、「メッセージ」に当たる部分がわかりにくい印象だったかもしれません。ただ、自分が学会発表や進捗報告で話すときに作るスライドでは、まずスライドの内容をまとめた一文を「タイトル」に設定し、実験結果が一目でわかるよう工夫したものを「ボディ」部分に配置、そこから導出される結論、あるいは次につながる仮説をスライドの最下部に「メッセージ」として配置する、ということを心がけて資料を作っています。

Q2:全体的に淡い目の色を用いておられるように感じますが、何か目的があるのでしょうか。

A2:図形や文字の色の主張が激しすぎるとそちらに視線が集中してしまうので、色の派手さは抑えています。また、スライド中の文字の色も、真っ黒ではなく濃い灰色に設定し、白色のスライド背景とのコントラストが強すぎないように工夫することで、見る側の負担を軽減させています。

Q3:キーワードのピックアップや図式化に失敗することがあるのですが(自分も周囲も)構造の整理に失敗しているせいなのかと思います。構造の整理ができていない場合、気づく方法はあるでしょうか。また、練習方法はあるでしょうか。

A3:自分なりに図式化した後、他の方に見ていただくのが一番の方法です。構造化した箇所だけを示して意味が通るかどうかが大事で、発表前に他の研究室メンバーに見てもらい、確認してもらうのが良いかと思います。練習方法ですが、自分の場合は、他の人のスライドの修正を数多く行う中でどうすれば文章を図式化できるか考えてきたのが効果的だったかなと感じています。そうする中で、どういった種類・品詞の単語をピックアップすれば図式化がうまくできるかを経験的に知っておくことが大切だと、個人的には思います。

Q4:矢印を使い分ける方針があれば教えていただきたいです。

A4:矢印(→)と矢頭(▶︎)の使い分けでしょうか。特に使い分けているというわけではないのですが、同じスライドの中に何本もの矢印(→)を使うと、線の数が多くなってしまいごちゃごちゃした印象を与える可能性があります。ですので、1スライドに使用する矢印の数はかなり限定しています。一方、矢頭(▶︎)は線の数も少なくシンプルで、スペースもそれほど取らないので使いやすいかと思います。フローチャートを使って実験の流れを説明するときも矢頭(▶︎)を使っています。

Q5:メインカラーとサブカラーはどうやって選んでいますか?

A5:以下のサイトで自分の好きなテーマカラーを探し、見本となるようなデザインを参考に色を選んでいます。メインカラーは濃い色、サブカラーはメインカラーの明度を下げたものを使用しています。
https://color.adobe.com/ja/search?q=%E6%A3%AE%E6%9E%97

Q6:英語での発表スライドも、日本語のスライドを作るときと同様の考え方で作成していますか?

A6:自分はほとんど同じ考え方で作成しています。文字は少なく、図を大きくなどといったところは共通して重要です。あくまで個人の印象ですが、自分の周りの学生・ポスドクの英語のスライドを見ていると、日本で自分が見た日本語のスライドよりも文字で説明している箇所が少なく、余白が大きい印象です(その分、説明不足だと指摘されているところも時折見ますので、バランスが重要かと思います)。

Q7:オンライン発表と現地での発表で、スライドの作成に違い(フォントサイズや文章量など)はあるでしょうか。

A7:自分はほとんど同じように作成しています。ただ、文字のサイズについては、オンラインでの発表のときは多少小さくても見えるのでそれほど気にならないですが、オンライン発表で使ったスライドをそのままオンサイトでの発表に使うと、文字のサイズが小さい印象を与える(特にグラフの縦軸や横軸の文字)ので注意が必要です。
 その他、オンラインのときに工夫していることがあります。自分はkeynoteを使ってスライドを作成しているのですが、パワーポイントと違いオンライン画面でも利用できるレーザーポインタの機能がないので、ポインタがなくても聞き手がどこに視線を向ければいいかわかるような工夫をしています。例えば、注目してほしい単語があれば、そのスライドをコピー&ペーストして2枚連続した形にし、2枚目の方でその単語の色のみを変える(あるいは、その単語の背景の図形の色を変える)などして目線を集中させる、などです。また、イラストレーターを使ってスポットライトを当てるような図形を作成し、それをスライドに挿入することで注目してほしいワードに目が向くように工夫したりもします。

Q8:上手いアニメーションの使い方がわからない。

A8:アニメーションは基本的に使用しなくてOK、と思っていただいて大丈夫です。アニメーションを利用すると、スライド中の図形の動きに意識が集中して内容に100%集中してもらえないからです。

Q9:図を書く際に使用しているアプリが気になります。

A9:自分も含め、周りの研究室メンバーはイラストレーターまたはBioRenderを利用しています。イラストレーターの代案としてInkscapeを利用している人もいます

Q10:スライド1枚に対する適切な情報量がどれくらいかがわからない。

A10:文字と図・イラストの比率で言いますと、【文字:図・イラスト = 3:7】程度になるよう構成し、文字の情報量が多すぎることのないよう気をつけています。データを示す部分も、1スライドに1データが基本です。

Q11:学生への指導方法がわからない(色々な本を紹介するなどしてはいますが、センスや好みをどこまで伝えるかは悩ましいです)。

A11:個人的には、スライドの見た目に現れる個人のセンスや好みは(明らかに研究発表のスライドに相応しくないと思われる場合を除き)、学生にお任せして問題ないと考えています。例えば「学会発表で使うにはかわいげがありすぎる」、逆に「きっちりしすぎていて堅苦しい」、といった見た目に関わる印象は、個人個人で感じ方は千差万別ですし、時代によってもどういったデザインが受け入れられやすいかは変化していくものだと思いますので、そこを気にしすぎて指導しても、学生にとってはそれほど大きな収穫はないのかもしれない、と感じています。そういった見た目に関することとは逆に、「自分が何に課題を感じ」「その課題を解決するためにどういった実験をし」「その結果何がわかったか・わからなかったか」といった、論理構築に関わるポイントは時期が変わっても普遍的なものだと思いますし、そのヒントを学生と共有し、その論理を100%反映したスライドデザインにさえなっていれば(学生個人のセンスや好みで多少スライドの見栄えが変わったとしても)、発表スライドとしては問題ないかと思います。

Q12:出来上がったスライドが地味で愛想のない感じになる。

A12:地味で愛想のない感じでも、内容がわかりやすければ全く問題ないですので、安心してください。色使いも最低限で大丈夫ですし(メインカラーとサブカラーの2色、他は濃い灰色の文字、など)、図形に無理に影をつけたりグラデーションをつけたり、カラフルにして派手にしなくてもOKです。

Q13:レーザーポインタの上手な使い方が分からない。

A13:レーザーポインタは、示したい単語や図を一度大きく囲むように使った後、見てほしい単語や図の近くで1-2秒間、ポインタを固定させて使うのが鉄則です。ぐるぐると何度も回転させたりするのは逆効果ですので避けます。

Q14:スライド作りにいつも時間が掛かってしまうので、なるべく短い時間で効率よく作るコツがあれば教えていただきたいです。

A14:私たちの研究所では、研究所が作成したスライド・ポスターの作成テンプレートがあり、皆それをベースに資料を作ることで時間を節約しています。何のフォントを使うか、文字のサイズはどうするかまで指示されています。テンプレートを作るまでしなくても、スライドタイトルの文字のフォント・大きさを固定し、そのスライドをコピー&ペーストして活用することで、なるべくスライド作成にかかる時間を節約しています。以前、別の機会にテンプレートを作成したことがありますので、以下のリンクが何かしらのご参考になれば幸いです。また、BioRenderのサイトでは、すでに利用できるポスターのテンプレートがいくつか配布されていますので、そちらを活用するのも手です。
https://drive.google.com/drive/folders/1abQ9JgEGHgTX3_QE_UDLq_dFB4WtQJtz?usp=sharing

Q15:研究計画・内容などを図で上手に表現できない。

A15:研究計画の図式化は、単語をピックアップし、その背景に四角の図形を配置して他の要素と区別して識別しやすくした上で、要素同士を矢印か矢頭でつないでフローチャートを作ると、自分の場合は上手く図式化できたことが多いです。研究計画では、形容詞や副詞をピックアップする必要性は低く、「何を(目的語)・どうする(述語)」を示す単語に注目して抜き出すと文章をそのまま表示する必要がなくなります。研究内容を図で表現するときも同じです。研究の結論を図でまとめるときは、私の周りの学生やポスドクは、「比較したもの(例. コントロール細胞と遺伝子ノックアウト細胞)」をスライドの半分ずつに分けて表示し、それぞれの実験群で得られた観察結果を簡単に記述するような形で結論スライドを作っている人が多いです。

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