【C-ENGINE研究インターン詳細事例vol.19】BIPROGY×京都大学

2022年度にBIPROGYで行われた博士研究インターンシップ(約3か月)の参加インタビューをまとめた「研究インターン詳細事例Vol.19」、ぜひご高覧ください!

※研究インターン詳細事例とは?

C-ENGINEでこれまで実施された研究インターンシップ、様々なグッドプラクティスが報告されています。その中で、C-ENGINE事務局が、参加した学生・指導教員・企業担当者の声を、インタビュー記事として詳細事例にまとめています

その他の研究インターンシップ詳細事例はこちら

研究インターン詳細事例Vol.19:量子アルゴリズムの能力を探る研究

ポスドクに進んだ後も、企業に就職するという選択肢がある

インターンシップ概要

実施期間:2023年2月1日~2023年3月31日(2カ月間)

受入企業:BIPROGY株式会社

テーマ:量子アルゴリズムの能力を探る研究

研究インターン詳細事例Vol.19
京都大学理学研究科D2(当時)
菅野 颯人さん

現在取り組まれている研究について教えてください。

大まかに言うと素粒子論の研究です。素粒子論という分野の中でも、特に「場の量子論」という理論の性質を調べる研究をしています。「場の量子論」は、素粒子を記述する理論としてよく知られたもので、素粒子だけではなくて、例えば物性理論、固体中の電子の運動とか、そういう量子多体系を記述することのできるものとして広く使われている理論です。ただし、数学的にきちんと定義されていないということもあり、その性質がまだ十分に理解されていないので、理論そのものの性質を理解しようという方向性で研究をしています。

研究インターンシップに応募された経緯について教えてください

今回の応募にあたって、インターンシップを実施先として量子コンピュータ関連のテーマを掲載している企業という方針で探していました。量子コンピュータは僕の専門が比較的使える分野で、特に今研究している「場の量子論」に関する知識を活用・応用えきる研究を企業でも行える可能性のある分野だと思っていたので、この分野でのインターンシップを探していました。それをC-ENGINEのIDM上でインターンシップ一覧から見つけてチャットで相談した時に、コーディネータから「オンラインでの交流会があるから、まずはそちらに参加してみては」と勧められたのが最初です。

オンライン交流会では、BIPROGYさんでの受け入れを担当してくださった長井さんが、素粒子論で昔ポスドクをやっていたという話を聞き、同じ分野出身の人ということを知りました。同じオンラインのルームには僕と長井さんと、もう一人、一緒にインターンシップに参加した人がいたのですが、3人とも素粒子論、原子核理論といった近い分野だったので、分野内の話で盛り上がりました。この交流会の後に、研究インターンシップに参加したという感じでした。

研究インターンシップで印象に残っていることや、終了後に感じているご自身の変化を教えてください

初めてBIPROGYさんの本社にお邪魔したときには、大きな1つのビル全体がそのままBIPROGYさんという感じで、スーツ姿のビジネスマンが行き交う中を入っていかねばならず、非常に緊張しました。長井さんたちに出迎えていただき、会議室で研究グループの皆さんと一緒にミーティングを行いました。最初に自身の研究内容を発表し、その後、インターンで行う内容に関する入門的なレクチャーをしていただきました。研究グループの方々とのミーティングで、研究の話をし出すと「共に研究者なのだ」と共感することができ、緊張がほぐれました。

一番印象に残っているのは、自分がインターンシップで実際に取り組んだ内容です。最初の1か月は、長井さんが「量子コンピュータ関連の話題の中で、興味のあることやテーマを自分で見つけてみて」ということを言ってくださったので、僕が興味のあるテーマを探して、最終的にその関連論文のレビューをまとめました。普段の研究の文脈から気になっていた論文が、実は、量子コンピュータの応用の上で役に立つ、あるいは役に立つ可能性のあるものだったということを知ることができたのが印象に残っていると言いますか、面白いと思えましたし、僕にとっては大きな学びでした。

研究を直接に量子コンピュータに繋げていくことは少し難しいかもしれませんが、大学に戻ってからも、研究インターンシップで学んだ内容は、現在の研究にとても生きています。「場の量子論」の研究と言っても、いろんな方向性が考えられるのですが、このインターンシップを通して量子コンピュータにも役立つかもしれないというポイントを認識できるようになったと思いますし、その視点を学ぶことができたのは大きかったと思います。自分で毛入の方向性を考えるときにも、こういう活用ができたら面白いんじゃないか、といった視点が持てるようになりました。

企業での研究について何か気づいたことはありますか

事前に思っていたよりも、研究テーマを設定する自由度があるなと思いました。もちろん応用を見据えて研究の立案をしないといけないというのが、今の僕らがやっているような基礎研究とは違う所だと思うのですが、少なくとも僕が研究インターンシップで受け入れていただいた部署は、ある程度テーマ選びの自由度があるような感じでしたので、少しそれが意外でした。企業の研究は利益に直結しやすいことをやるというイメージがあったのですが、実際にはそこまでシビアでなく、ある程度の自由度を持って研究ができるというのは、想像していたこととは良い意味で違い新鮮でした。またテーマを絞り込んでいくときの大まかな方針として、まず具体的な応用を見据えた最終的なアウトプットを設定して、それに対してどうアプローチするかというような研究テーマの立て方をしていたので、それは基礎研究とは大きく違うところだと思いました。

インターンシップを通じて、自分の適性や進路について感じたことはありますか

企業での研究に「適していないわけではない」ということがわかりました。今後の進路として、ポスドクに行くことは決まっているのですが、その後は特に僕の専門である素粒子論分野ではどうなるかわからないので、いくつか選択肢はもっておきたいという気持ちは正直あります。もともと、何も考えずにポスドクに行くことだけはやめようと自分の中では思っていて、企業での研究を見てみたいというのがインターンシップに応募したモチベーションでした。研究インターンシップへの参加を通じて、企業に就職するのもいいなという風に考えることもできたと思います。将来の選択肢が広がったという点では、今回のインターンシップの存在はとても大きかったです。研究所の方々から様々なお話を伺うことで、博士卒の時にアカデミアに残るか企業就職するかの2つの選択肢だけではなくて、いろいろなキャリアパスがあるということを学びました。例えば一旦ポスドクに進んでも、もし企業で就職したいと思ったら、そこから企業に就職するという進路もあるのだなと、研究所の方の経歴や経験を伺うことで具体的にイメージすることができました。受入れ先の方とのお話のなかで、「もしポスドクに行きたいのなら、とりあえず行って、企業に就職するかどうかはその後考えればいいんじゃないの」という感じのことを言っていただけて、安心と言うと言いすぎかもしれませんが、今はポスドクに行ってみようという気持ちがより固まりました。

C-ENGINEの研究インターンシップと他のインターンシップとの違いとして感じたことがあれば教えてください

今回の研究インターンシップでは、そのやり方や日程合わせまで、全て相談しながら決めていった感じでした。なので、大学での研究を進めつつ、インターンシップにも参加するというような選択ができ、自由度があり良かったなと思います。一般的に企業で募集している普通のインターンシップだと、「この日程でこのテーマについて実施します」というような募集が多く、まずはその日程を確保してからインターンシップに申し込む感じになると思うのですが、C-ENGINEの研究インターンシップでは、とりあえずのテーマとざっくりとした期間、例えば1ヶ月ぐらいという大まかな設定がまずされていて、詳細な点は受け入れが決まった後にかなり自由に決められたので、それは非常に良かった点だと思います。

今後参加される学生さんに対してのメッセージをお願いします

僕の様に、基礎研究の分野でポスドクに進むことを考えている方あ、企業でのインターンシップに行く必要性はあまりないと感じているかもしれません。それでも僕にとっては、企業で研究インターンシップに参加したという経験がとても有意義なものだと思えました。特に、一度ポスドクに進んだ後に企業に就職するという選択肢を、現実的なものとして検討できるようになったというのが、個人的にとても大きなメリットだったと思っています。もしポスドクに行くことが決まっている、自分は研究者しか考えていない、というような人でも、企業での研究インターンシップに一度行ってみると、将来の選択肢が広がるという意味で良いと思います。

視野が拡がりその後の人生の選択肢が増える

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京都大学大学院理学研究科 
物理第二教室 素粒子論研究室
教授 杉本 茂樹 先生

今回の研究インターンシップに菅野さんが応募された際の状況についてお教えください

菅野君から研究インターンシップに参加するという話を聞いた時には、彼が今受給しているフェローシップの学生は、インターンシップを受けることが推奨されているので、それに沿って行ってきなさいとい感じで、自由に菅野君の思うままにやってもらえたらと思っていました。

今回の研究インターンシップ終了後に菅野さんに感じている変化を教えてください

菅野君自身の視野は広がったのだろうなということは感じます。例えば何かの研究会に参加して、一つ学んで帰ってきたというような感じの変化でしょうか。

研究インターンシップへの参加が学生の研究や進路に与える影響についてお考えのことはありますか

菅野君は、コミュニケーション能力は抜群に優れていて、企業で研究することになったとしても、活躍できるような人だと思います。我々の分野では、潜在的な能力は非常に高く、内にこもって自分の研究をすることはできるけれど、それ以外は苦手であるような人も中にはいるのですが、彼の場合は本当にいろいろなところで活躍できる人材だとおっ持っています。

研究インターンシップは、僕自身は経験したことがないものの、参加した学生にとっては視野が拡がり、その後の人生の選択肢が増えるという意味では重要という気がしています。

研究インターンシップに限らず、例えば僕自身も大学院に入ってから、他の選択肢を探るために教育実習を受けたりしたのですが、そういう形で普通の研究とは違うことを1ヶ月くらいやる分には、大学院での時間の使い方として特に問題ないと思います。

今後、研究インターンシップを学生さんにお勧めいただけますか

企業等への就職を選択肢として考えている学生がいたら、「一度、研究インターンシップでも行ってみたらどうか」と言いたいなとは思います。一方で、難しい点としては、学生自身が「(アカデミアで)研究者になりたい」と考えている場合に、「君はインターンシップに行った方がいいんじゃないか」というようなことを言うと、その学生の視点からは、「自分は研究には向いてないと言われているのでは」と捉えられてしまう可能性があるので、その辺を少し心配してしまいますね。

C-ENGINEの研究インターンシップが、アカデミアに進むことを希望する人にとっても役立つことを、もっと示す必要がありそうですね。どうもありがとうございました。

アカデミアでの研究を続けるか企業に就職するかを考える際に「企業研究」という道もある

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BIPROGY株式会社 
総合技術研究所 技術探究室 

長井 稔 様

研究インターンシップ受け入れについての貴社のお考えを聞かせてください

インターンシップは単に教育や企業を知る機会を提供するだけでなく、企業とインターン生の両方にメリットのある活動であるべきだと考えています。博士課程の学生さんを研究インターンシップで受け入れることが、お互いにとってプラスの効果・刺激になることを期待して実施しています。

今回受け入れた菅野さんの第一印象はいかがでしたか

私のもともとの専門分野に近い分野を専攻していらっしゃる方なので、菅野さんの研究の話はある程度理解できることもあり、その話を聞く中で熱心に研究に取り組まれている優秀な学生さんだと感じました。私の知識・経験を飛び越えたことを菅野さんと一緒に進めることで、予想もつかないような新しい知見が生まれるのではないかという期待が、今回の受入の決め手となりました。

インターンシップの実施形態や成果について教えてください

●対面での実施について

インターンシップの最初と最後に1回ずつ、計2回本社に来てもらう機会を設けました。

研究内容についての議論や発表を対面にて実施することで密なコミュニケーションを取ることと、弊社の実際の雰囲気を見ていただくことが目的です。

最初にお越しいただいた際は、自己紹介も兼ねてインターン生に自身の研究紹介をしていただきました。その後、インターンシップの研究テーマに関して基礎的な知識を教える講習の時間を設け、研究テーマをどうするかについて話し合いました。

菅野さんに研究紹介していただいたり、講義で基礎的な部分を説明したりというコミュニケーションの中で、菅野さんがどのような内容に興味があるのかを把握することができました。それが適切な研究テーマ設定につながり、お互いにワクワクする研究インターンシップができました。

インターンシップの終了時に来社してもらった際は、インターンシップの成果を報告していただく報告会を行い、その後に弊社内の研究を紹介するという、研究交流を行う時間も設けました。菅野さんには積極的に質問やコメントをしていただき、大変有意義な時間となりました。弊社の研究をいろいろと知れて良かったとの感想を頂き、本社にお越しいただいてよかったなと思いました。

●テレワークについて

弊社では、研究インターンシップを実施するのは初めての経験であり、しかも実際の弊社研究員の勤務形態を体験するという意味も込めてインターンシップもテレワークで実施することとなり、手探り状態で進めていきました。

一般的にテレワークにおいては、コミュニケーション不足が問題として挙げられます。特にインターンシップ生にとっては、初めての経験なのにテレワークで取り組むというのは非常に難しいことだったと思います。そのため、密にコミュニケーションをとる方法を模索しながら進めました。

毎日終業前にWeb会議でカメラをつけながら通話をして、進捗の具合や悩んでいること、分からないことについて話をするとともに、事務連絡についてはTeamsのチャットを利用して進めました。弊社側と菅野さんの双方が、コロナ禍と通じてテレワークに対する耐性がついていたこともあり、想像していたよりもうまくコミュニケーションが取れたと思います。

●進捗管理について

週報や日報の作成・提出の有無は、弊社とインターン生の間で決めて良いとのことでしたので、菅野さんについてはそのような報告書の作成に囚われず自由にやっていただいた方がより成果を出せるだろうと思い、期間途中での報告書の提出は不要としました。その代わりに、先述した毎日の終業時間のWeb会議で進捗を管理しました。

菅野さんは優秀な学生さんで、研究者としても独立していましたので、こちらでテーマを考えた後は、どんどん自分で調査を進めて素晴らしい結果を出してくれました。

●インターンシップの成果について

インターンシップのテーマは量子コンピューターで、具体的には「量子誤り耐性の場の理論的考察」ということを、菅野さんに取り組んでいただきました。

弊社は営利企業ですから、どのように技術を応用できるかばかりにやはり目がいってしまいます。一方で、菅野さんは理論系の人なので、基礎的な所から突き詰めて考察してくれました。

トポロジカル秩序層が誤り耐性に関連していることは既知の内容でしたが、誤り耐性のひとつの方法論である「Toric code(トーリックコード)」のトポロジカル秩序層との具体的な対応については、量子計算(量子コンピューターの理論)の実適用を考える私のような研究者にとってあまり突き詰めて考えることのないテーマでした。

Toric codeはスピン系の物性物理やその場の理論的研究を背景知識として生み出されたのではないかと考えています。菅野さんが探し出した論文は、1970年代の古いものでした。

その時代の研究を背景として生まれたToric codeは、それ以降の時代にはその存在が前提とされてしまい、若い世代のしかも量子計算(量子コンピューターの理論)の実適用を考える研究者にとってはToric codeの場の理論的な解釈は忘れられた知識となっています。それを今回菅野さんの努力によって再発見・理解することで、量子計算の分野の基礎固めをすることができました。

それによって、誤り耐性のあるコードとしてToric code以外にもこのようなものもあり得るのではないかという所まで言及できたというのは、新しい視点がもたらされたという観点からも非常に興味深かったと思います。

今回の研究インターンシップでは、学生側、企業側にどのような影響があったかを教えてください

●学生側への影響

最近量子コンピューターができたことでトポロジカル秩序層を実際に作れるようになり、それをきっかけにトポロジカル秩序層を理解しようという研究が進んでいます。

京都大学の先生でトポロジカル秩序層の分類とかをされている先生がいらっしゃいますが、菅野さんは今回のインターンシップをきっかけに量子計算分野の輪に入れるようになったそうです。京都大学で開かれた研究会に出席し、そちらの分野でこんな話がありました、というような報告を受けています。菅野さんはアカデミアの世界で生き残れるかに不安を持ちつつポスドクに進むということですが、私の様にポスドクから企業就職という道もありますので、今は研究に注力していただき、大きく活躍していただくことを期待しております。

●企業側への影響

今回のインターンシップを通して、新しい知見や成果が得られたことはもとより、優秀な学生さんと楽しく議論ができたことは、私自身の経験として非常に良かったと思います。また、研究交流会に参加した弊社メンバーへの影響も非常に大きかったように思います。

研究交流会においてインターン生が積極的に質問してくれたことで、研究内容について詳細な議論ができ、それがフレッシュな意見・視点を取り入れる機会となりました。

今後、研究インターンシップへの参加を考えている学生にメッセージをお願いします

弊社に応募してくださる方に多い理学系の方やドクターに進んでいるような方は、一般的に就職で不利だと言われていることもあり進路で悩んでいる方が多いようです。アカデミアでの研究を続けるか、企業に就職するかを考える際に、企業研究という道もあること、そしてご自身で企業研究の雰囲気を知ってみることは、非常に有益だと思います。お互いにメリットがある取り組みですので、皆さんもぜひ研究インターンシップにご参加ください。

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BIPROGY本社

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C-ENGINEの研究インターンシップは、あなたの研究と社会の接点を見つけるところから始まります。
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