【C-ENGINE研究インターン詳細事例vol.26】ダイキン工業×奈良女子大学

2024年にダイキン工業で行われた博士研究インターンシップ(1.5か月)の参加インタビューをまとめた「研究インターン詳細事例Vol.26」を発行しました!

※研究インターン詳細事例とは?

C-ENGINEでこれまで実施された研究インターンシップ、様々なグッドプラクティスが報告されています。その中で、C-ENGINE事務局が、参加した学生・指導教員・企業担当者の声を、インタビュー記事として詳細事例にまとめています

その他の研究インターンシップ詳細事例はこちら

研究インターン詳細事例Vol.26:熱交換器パス取りを最適化するアルゴリズムの開発

位相幾何学から熱交換器へ―数理最適化の実践―

インターンシップ概要

実施期間:2024年11月~2024年12月(1.5カ月間)

受入企業:ダイキン工業株式会社

テーマ:位相幾何学から熱交換器へ―数理最適化の実践―

研究インターン詳細事例vol.26
奈良女子大学
人間文化総合科学研究科D2(当時)
竹内 陽香さん

ご自身の研究分野と今回のインターンシップについて教えてください。

大学の研究室では数学のトポロジー、位相幾何学と言われる分野を研究しています。工学的な知識のバックグラウンドは特になく、位相幾何という分野で計算機を使ってプログラミングをしながら、記号的に幾何を扱うような研究を行っています。今回、ダイキン工業さんのテクノロジーイノベーションセンターで6週間の研究インターンシップに参加させていただき、「熱交換器のパス取りを最適化するアルゴリズムの開発」というテーマに取り組みました。

なぜインターンシップに参加しようと思ったのですか。

自分のアカデミックな背景や数学分野の知識、そして数学的な考え方を活かして、新しい価値観を生み出すような経験がしたいと思っていました。実は修士課程でもC-ENGINEのインターンシップに参加した経験があるんです。その時の経験も非常に有意義だったのですが、今回はそれよりもさらにキャリアビジョンを明確にしていきたいという思いがありました。そういった思いを持って合同説明会などに参加していたところ、ダイキン工業さんが提示されているテーマが、数学専攻の私でも親和性がありそうな内容だったので、興味を持って応募させていただきました。

今回はどのようにテーマを選んだのですか。

説明会の時に提示されていたのはサンプルとしての過去事例のようなものでした。実際にインターンシップが決まった後、マッチングの段階で、その時点でリアルタイムにあるテーマをいくつか提示していただき、その中から選びました。いくつかあるテーマの中で、この「熱交換器のパス取りを最適化するアルゴリズム」というテーマに惹かれたのは、もしかしたら私が数学でやっているような知識が活かせるのではと感じたからです。熱交換器は金属製の管でできているのですが、その設計を考えるというテーマで、特にパス取りという部分で親和性を感じて選ばせていただきました。

テーマの内容について、もうすこし詳しく教えてください。

熱交換器というのはエアコンの中にある部品で、簡単に言うとエアコンにおける心臓部分のような重要な部品です。この部品がないとエアコンの性能は決まらないと言っても過言ではなく、エアコンの性能を大きく左右する部品になります。現在、この熱交換器の開発においては、人手不足や開発スピードが課題となっており、大きな必要性があるわけです。私は特に、熱交換器の設計における数理的な解析というところを担当しました。

今回のインターンシップで、特に意識して発揮・開発したいと考えたスキルはありますか。

トランスファラブルスキルR.I.S.E.として3つを選択しました。1つ目は「I-3」の洞察力、探求心、議論展開力です。研究を進める上で、物事を深く掘り下げ、本質を見抜く力は非常に重要だと考えていました。2つ目は「S-1」のチームワーク力と他者との共同です。社会で働く上では絶対に必要なスキルだと思い、企業という環境でどのように他者と協働していくのかを実践的に学びたいと考えました。3つ目は「S-3」の研究結果の社会還元です。これを選んだ理由は、普段数学という分野の研究をしていると、社会貢献に結びつけるという点で難しい部分があるからです。数学の研究が実際にどのように社会に役立つのか、それをもっと身近に感じたいという思いがありました。これら3つのスキルを念頭に置いて、インターンシップに臨みました。

今回どのような成果を出されたのですか。

熱交換器の熱交換量を最大にするパス取りの数理最適化というテーマに取り組みました。従来は、熱交換の総量を見て設計に反映し、評価を行っていたのですが、私は、それに加えて「エントロピー」という物理量を見るのはどうかという、新たな視点を提案しました。つまり、総量を見るだけではなく、効率性にも着目したのです。エアコンがどのように効率的に動いているのかといった観点から評価するという新しいアプローチを提案できたことが、今回の成果と言えるのではと考えています。

インターンシップを経験して、どのような気づきや学びがありましたか。

就活面と自己理解の面で学びがありました。まず就活面ですが、実際の企業での体験を通じて、企業理解に非常につながったと感じています。これは当初の目的の達成でもあると思うんですが、どういった働き方が自分に合っているのか、どういうキャリアプランが良いのかということを、リアルに考えることができました。この経験は、その後の様々な企業の選考でも役立ったのではないかと感じています。具体的には、どこかの会社に行くとなった時に、自分が何がしたいのかということを、自分の言葉でしっかりと伝えることができるようになったと思います。企業での実務を経験することで、漠然としていたキャリアイメージが具体化されたんです。
また、自己理解という面では、自分が研究生活や今までの学生生活の中で、どういったものを培ってきたのかということについて、深く考える機会になりました。特に感じたことを3つお話しします。まず第一に、社会で共同的に活躍していくには、対話力と探求心が必要不可欠であるということを強く認識しました。これは特に必要だと感じたのが、他の人とコミュニケーションを取る時なんです。その人がどういった技術を持っているのか、どういう仕事をしているのかということを知る際には、対話力はもちろんのこと、その人を深く知るための探求心というものが、すごく大事なんじゃないかと思いました。第二に、複合的な課題に対して自分ができることを考える力、課題設定力と言わせていただきますが、そういったことの重要性です。これは大学での研究とも共通していると感じました。与えられた課題をただこなすのではなく、複雑な問題の中から本質を見抜き、自分の強みを活かせる切り口を見つけ出す。そういう力の大切さを実感しました。第三に、これが一番印象に残っているのですが、自分がやりたいと思っていること、つまり自己実現と、企業の利益や社会貢献といったところの両立を図ることの面白さです。これは非常に難しい部分もあるんですけれども、同時にとても面白いことだと感じました。自分の興味・関心と社会的な価値創出をどう結びつけるか、それを考えることが企業で働く醍醐味なのだと理解できました。

数学専攻という立場から、企業での研究に取り組んでみていかがでしたか。

企業では、理論的なことにこだわり続けるわけではないという発見がありました。もちろん数学的な考え方は活かせるのですが、それ以上に大切なのは、分からないことに対する理解や探求心だと気づきました。受け入れ先のデジタルエンジニアリンググループの研究者の方からも、「数理系の専門でありながら、力学を理解しようとする姿勢が素晴らしかった」というコメントをいただいたと伺っています。自分の専門外の分野に対しても、どこまでも理解しようとする姿勢が、企業での研究では重要なのだと実感しました。

このインターンシップ全体を振り返っての感想をお願いします。

実地での体験、いつもと違う環境だからこそ気づけることが本当に多くありました。普段の大学での研究と企業での研究では、アプローチの仕方や納期の考え方なども違いますし、そういった違いを肌で感じることができたのは貴重な経験でした。自己理解につながった、非常に良いインターンシップだったと思っています。専門性を深めることも大切ですが、それ以上に、分からないことをどこまでも追求する探求心や、異なる分野の人々と協働する力の重要性を学べました。この6週間の経験は、今後のキャリアを考える上で、確実に自分の糧になると感じています。数学という抽象的な学問が、実社会でどのように役立つのか。その可能性と面白さを体感できた、非常に有意義なインターンシップでした。

「数学的視点が企業研究に新たな価値をもたらす」

41518f96e81e235e53e6c0307d00704a 【C-ENGINE研究インターン詳細事例vol.26】ダイキン工業×奈良女子大学 2024年にダイキン工業で行われた博士研究インターンシップ(1.5か月)の参加インタビューをまとめた「研究インターン詳細事例Vol.26」を発行しました!

奈良女子大学研究員 
自然科学系数学領域 
准教授 村井 紘子 先生

今回研究インターンシップ参加にあたり、指導教員として期待されたことは?

竹内さんは当初から企業への就職を希望しておられまして、修士の時もインターンシップをされていたため、まずは彼女のキャリアに繋がるということ。次に、自分の考えや研究について言葉を尽くして他者に説明をする力をつけることです。研究でももちろん大事なのですけれども、社会に出るとより色々な方に向けて、相手の立場に応じて言葉を選んで丁寧に説明をする力が必要になると思いましたので、そちらの能力が上がることを期待しておりました。

研究室での竹内さんについて教えてください

研究分野は低次元位相幾何学やトポロジーと呼ばれる分野で、計算機を用いて曲面の上の曲線を研究しています。トポロジーでは曲線をぐにゃぐにゃ変形させても同じものとみなすのですが、かっちりした数値を扱うわけではないので、そのまま計算機に乗せるという訳にはいきません。彼女は、うまく計算機に乗せるような工夫をして研究しています。

数学を他領域に応用する際の姿勢について、どのようにお考えですか?

数学の研究全般に言えることですが、一つ一つの言葉をきちんと定義して、課題を単純化する。複雑な問題をいくつかの単純な問題に切り分け、「もしこうならばこうである」ということを積み上げることで、アプローチの仕方を考えるというのが数学の基本です。これは数学に限らず自然科学全般にも言えることかなとは思いますが、複雑な課題を単純化して、その単純化された課題に対してアプローチの仕方を考えるという姿勢は、様々な問題を解決するためのアプローチになると思います。

竹内さんは大学の研究室とは異なる企業での環境に適応できたとお感じですか?

現在大学の研究室には竹内さんの同期がいないものですから、基本的には教員と1対1での研究活動になっており、企業でどのように振る舞うか未知数でした。ただ、竹内さんは知らないことは臆せず「ここがわからないのですが」と言える、それから、人に言われたからやる、とかではなくて、良くも悪くも頑固といいますか、自分が納得したことは先に進めるけれども、納得いくまできちんと議論をしたいというタイプでして、インターンシップを終えて様子を伺ってみると、それらのことが功を奏して、自分が知らない分野に行っても臆することなく、貪欲に知識を吸収して成長してきたようです。

インターンシップ参加後に変化は見られましたか?

彼女の場合は、修士のときにも研究インターンシップに行っておりましたので、劇的に変わったということはないです。以前からしっかりしていて、企業に対する
自身の見方を持っていました。一方で、研究インターンシップ中に相手先の企業さんで定期的にミーティングがにあり、議論をする場が割と頻繁にあったそうなのですが、その経験を通じて、定期的なアウトプットが大事だという認識を高めてくれたようです。じっくり考え抜いてから発言するより、時には現状を相手と早く共有した方が良いこともあるという感触を得て帰ってきてくれたので、「ちょっとここが分からないのだけど」といったことを気軽に、早めに言ってくれるようになったなと感じています。

今回の経験が、今後の研究やキャリア形成にどのように影響していくとお考えですか?

彼女は無事に就職が決まって、研究室での生活は残り僅かになっているわけですけれども、インターンシップ中に「意外と数学が使える」ということを実感したようです。今、数学を学んでいることと同じように、多分一生勉強だと思います。新しいことに出会い、その時に知らないことをどんどん勉強し、分からないことを質問し、議論して吸収していくという、今行っていることは、この先も必要だし求められていくのだということを、より実感されたと思います。企業に就職してからも今と変わらず、良い意味で頑固なところも持ちつつ、他人にも早めに助けを求めて、のびのびと成長していってくれるのではないかと思っています。

大学院教育における研究インターンシップの意義について、ご意見をお聞かせください

大学の研究だけだとどうしても視野が狭くなりがちだと思います。学生は企業に行きインターンシップを経験することによって、自分がどう社会貢献できるかという、社会との繋がりを意識する機会になります。受け入れてくださる企業様にはご負担をお掛けするかと思いますが、学生のためにも、企業にとっても、良い機会になると思っています。

数学系学生が学外研究に取り組むことについて、時期や期間の面で理想的な形はありますか?

幸い数学は実験系ではないですから、数週間空けることがそこまで致命的なことには繋がらないのですが、実施する時期は重要かなと思います。博士課程の3年目はまとめの時期なので研究だけに集中して欲しいということがあります。博士課程の1年目は学生さんによるとは思うのですが、竹内さんの場合は修士から継続して研究も同じ方向性できていますので、そういう学生さんであれば1年目でも早すぎることはないと思います。期間については、「1ヶ月は長いのでは?」とも思っていたのですが、ほんの短い期間企業へ行っても「企業見学」で終わってしまうとは思いますので、企業側にとっても大変だとは思いますけれども、準備から指導までしていただけるのであれば、やはり1ヶ月ぐらいの期間実施していただくのがいいかと思っております。

トランスファラブルスキルRISEについて、ご意見をお聞かせください

トランスファラブルスキルを初めて拝見した時に、ここに挙げられているような様々な能力が大学院で身につくことや、企業にいても生かせるということはごく当たり前な気がしていました。専門知識がそのまま使えるわけではなくても、間違いなく「生かせる力」が身につくというのは当然だと思っていたのです。ただ、学生さんは意外に気づいていなかったのかなという気がしました。改めてこうやって様々なスキルに対して、自分はそれが身についただろうかと考えることはとても大事ですし、学生さんがアピールをするという意味でも、企業がどういうスキルを求めているかという視点を意識するためにも、とてもメリットになると感じました。

C-ENGINEのプログラムについて、ご意見をお聞かせください

本当にありがたいと思っています。私は企業のことはあまりわかりませんし、どのような企業が学生に合っているのか、どういう学生を求めてくださっているのかなどは、基本的に学生任せの就職活動という感じになってしまいますので、このように間を繋げてくださる方々がいらっしゃることは本当に心強いですし、大変ありがたいです。本学のコーディネータの先生方も学生のことを丁寧に見てくださって、企業の方も受け入れに関して、週報や取り決めなど、一つ一つ丁寧にしてくださって、学生の成長にも繋がったと思います。

産学連携の新たな価値創造を目指して

4c46422ffd0f6fe4c9f6f99b50f109a4 【C-ENGINE研究インターン詳細事例vol.26】ダイキン工業×奈良女子大学 2024年にダイキン工業で行われた博士研究インターンシップ(1.5か月)の参加インタビューをまとめた「研究インターン詳細事例Vol.26」を発行しました!

ダイキン工業株式会社 
テクノロジー・イノベーションセンター

チームリーダー 横瀬 清識 様

ダイキン工業株式会社 
テクノロジー・イノベーションセンター

管理グループ 藤松 あかり 様

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今回の研究インターンシップをお受け入れいただいた経緯について教えてください

横瀬氏:私はデジタルエンジニアリンググループに所属しておりまして、主にシミュレーションを業務としています。昨今、市場の変化が激しい中で、商品の上市を迅速に行っていきたいというニーズがあります。従来の試作ベースの開発ではなかなかスピードが上がってこないため、シミュレーション・机上で試行錯誤を行うようなプロセスを取り入れて、商品開発するスピードを高めていきたいと考えています。そこで、数学や物理の知識を武器に、スピードアップに貢献していただける、専門性のある方においで頂き、シミュレーション技術を高めることで、従来は実験中心だったものを、コンピュータシミュレーションに移行して開発期間を短縮していきたいという狙いがありました。

竹内さんに取り組んでいただいた研究テーマについて教えてください

横瀬氏:空調機は部屋を温めたり冷やしたりというのが基本的な機能になります。この温める・冷やすという役割を担っている重要な部品が熱交換器です。熱交換器の性能、つまりどれだけ効率よく空気を冷やしたり温めたりできるかという性能を、計算技術で最大限に発揮できるようにすることに、今回は取り組んでいただきました。熱交換器は、金属の板にパイプが通っており、パイプの中に熱媒体を通します。パイプ中を通っている熱媒体と空気との熱のやり取りを行うのですが、パイプ本数がかなり多いため、その経路を適切に設計してあげないと、熱交換器の性能を最大限出すことができません。これは設計上の大きな課題なのですが、かなりノウハウベースとなっているため、そこに数学的・機械的に最適解を出してあげることで、さらに設計スピードを高めることができるのではないかと考え、熱交換器の経路最適化問題をテーマとして取り組んでいただきました。

竹内さんは数学が専門ですが、本テーマとのマッチング度合いはいかがでしたか

横瀬氏:数学と工学との違いで、必ずしも「ぴったり」ではないところはありますが、問題を原理的に考察していくという点では、数学ご出身の皆さんは、我々、特に工学系が多い技術者とは違った観点でその問題にアプローチしていただけます。
今回は、その基礎的な考え方、基礎知識のところを十分に活用していただいた研究インターンシップだったと捉えております。博士の学生さんたちが持っている問題解決に対する基礎的なアプローチは、工学と数学という分野の違いがあっても、共通して役に立つと考えています。

研究インターンシップのメンターとしてご苦労された点や工夫された点について教えてください。

横瀬氏:プロセスとしては特に苦労はなかったと思います。まずはインターンを通して、企業で研究開発していく際に、どういった働き方があるのかというところを吸収していただくことが大事かなと思いましたので、目標管理にかなり重点を置きました。
今日は「ここまで理解できる」、「達成できる」、「このまま進めていけば達成できる」、「もう少し工夫してやり方を変える必要がある」のか、そういったところを、ゴールを目指す限られた短い期間でも結果を出してもらうための、「日々の過ごし方」を理解していただくことを意識しながら進めることで、竹内さんご自身にも、その「スタイルの違い」を勉強になった部分として挙げていただきました。大学の場合は十分な時間をかけて研究を進めるスタイルが多い中、企業では上市という目標があって、それから逆算してスケジュールを組むという違いがあります。

今回の成果についてはどのように評価されていますか

横瀬氏:最終的にこの問題が「完全に解ける」というところまではいけなかったのですが、その最適化を行っていく中で、熱交換器の性能をどう捉えるか、評価関数をどう設定するかという点に関して、竹内さんご本人がエントロピーという概念を持ち出し、これを評価関数にすることで、最適解に行き着けるのではないかという提案をいただきました。こちらに関しては非常に力になっていただいて、その最適化問題の解法というところに手応えを感じています。そこは我々としても助かるところですし、苦労されて着地点を見つけ出していただいたと思います。

エントロピーの概念を最適化アルゴリズムに導入することで、どのようなメリットが出てくるのでしょうか。

横瀬氏:最適化問題では、その解となる範囲空間がかなり広いので、なるべく最短距離で最適解に近いところに至っていきたいのですが、従来ですとやはり試行錯誤を結構繰り返して、「解が収束しない」とか、「これって本当に最適解なのか」というようなところが当時の我々の現状でした。ここにエントロピーの考え方を応用することで、こちらの方向に行けば最適解であるということは間違いないという方向性が見えてくることで、コンピュータシミュレーションの回数が減ることにより、正解に近づく時間が節約できたというメリットがあります。

インターンシップで問題解決の糸口が見つかった場合などは、期間の延長や、その後の共同研究の余地もありますか

横瀬氏:今回は「ゴール」までは至ってはいないものの、考えていただいた評価関数をベースに、それを取り込んでブラッシュアップしていくと言った、実際にご提案いただいた内容の検証を進めている段階です。
第一に考えるべきは、学生さんの学業とのバランスで、インターンシップが学業の妨げになってはいけないと考えています。期間を2ヶ月以内にしなければいけないとか、そういった制約がありますので、そちらにどう対応するかをあらかじめ決めた期間に沿う必要があるかなと思っています。一方で、成果を出していただければ、弊社が期間を延長したいと思った場合、もちろんお願いしたいと思っていますので、可能性としてはあるかなと思います。

博士課程の学生を研究インターンシップとして受け入れることの意義について、どのようにお考えでしょうか

横瀬氏・藤松氏:弊社の中でも、私たちのいるテクノロジー・イノベーションセンターは研究開発を行っており、もっと深く考えたりするというところが非常に重要な部門になっています。インターンシップで博士課程の学生さん、論理的に考える、学問を突き詰めるということをやっておられる方に来ていただくことで、部門としての研究開発に対する姿勢や、論理的に考えるというところについての活性化に非常にいい効果があると思っております。

博士学生の採用についてどのようにお考えですか

横瀬氏・藤松氏:弊社では博士学生を、「博士だから」採用するということはしておらず、修士学生と博士学生を同じ土俵で、その中で専門性や思考力、弊社への適性のところを等しく考えていますので、博士学生枠を特別に設けているわけではありません。一方で、工学的なアプローチがかなり限界に来ているというような分野も多く、我々がそういうところを、なかなか突破できないことが往々にしてあります。そこで、応用的なアプローチで実態を捉えていくのではなくて、第一原理の方から今一度見直すというところが、やはりこれから必要になってくることが多いと捉えています。その点、博士課程の皆さんが持たれている、そのような力をチームに加えていくことが必要だと考えています。その意味では、博士の皆さんの企業での活躍のフィールドもどんどん増えてきていると思いますし、弊社でもニーズがあると思います。

トランスファラブルスキルRISEの「学生が選ぶ3項目」で、自身の学びたい項目を選ぶ方、得意な項目でアピールする方などがいる点について

横瀬氏:インターンシップは長いようで短いので、どんなことを重視して臨みたいのかというところを提示いただけることが、受け入れる側としても非常にありがたくて、そこは継続して実施していただきたいところかなと思います。
藤松氏:私も、事前にお伝えいただくのは継続していただきたいなと思っているのですが、この研究インターンシップの中で企業で働くという新しい経験を通して、今まで自分が分かっていなかったような良さも見つかってくると思います。そのため、自分が選んだこと以外も貪欲に学んでもらうということも必要なのかなと思っています。

今後参加されようとしている学生に対して、メッセージをいただけますでしょうか。

横瀬氏:企業が研究開発部門を持っている意義と言いますか、研究に身を置く我々がどんな働き方をしているのかというところを、まずは実際に体験していただくことが大事だと思います。自分がこの企業に就職するとしたら、どのように今後の人生を歩んでいきたいとか、そういうことを考えるきっかけにし、それを糧にして今後に活かしていただければと思います。
藤松氏: やはり博士学生は、企業に就職するという選択肢がまだまだ念頭にない方もいらっしゃるのが現実だと思います。こういった研究インターンシップが最近増えてきていますので、積極的に参加していただくことで、企業に就職するという可能性を考えていただきたいなと思います。大学で研究するだけでは味わえないような難しさややりがいというものが出ると思いますので、積極的に挑戦していただきたいと思います。

最後に、C-ENGINEへのご要望やコメントがございましたら、お願いいたします。

藤松氏:研究開発部門として思考力があり探求心の高い学生さんに弊社に興味を持っていただきたいと考えております。C-ENGINE様には企業に興味を持つ修士・博士の学生が増えるよう、企業の魅力を学生や大学に伝えて頂きたいです。企業からもより多くの優秀な学生さんがダイキンに来てくれるよう、C-ENGINE様と連携してインターンや企業見学会を実施したいと思います。

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写真提供:ダイキン工業

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