【C-ENGINE研究インターン詳細事例vol.27】三菱電機×京都大学

2025年に三菱電機で行われた博士研究インターンシップ(1か月)の参加インタビューをまとめた「研究インターン詳細事例Vol.27」を発行しました!

※研究インターン詳細事例とは?

C-ENGINEでこれまで実施された研究インターンシップ、様々なグッドプラクティスが報告されています。その中で、C-ENGINE事務局が、参加した学生・指導教員・企業担当者の声を、インタビュー記事として詳細事例にまとめています

その他の研究インターンシップ詳細事例はこちら

研究インターン詳細事例Vol.27:金属3Dプリンタの異常検知システムの開発

異分野への挑戦と成長の1ヶ月

インターンシップ概要

実施期間:2025年7月~2025年8(1カ月間)

受入企業:三菱電機株式会社

テーマ:金属3Dプリンタの異常検知システムの開発

研究インターン詳細事例vol.27
京都大学大学院理学研究科
物理学・宇宙物理学専攻D2(当時)
疋田 純也 さん

ご自身の大学での研究内容を教えてください

大学では物理学・宇宙物理学を専攻しており、博士課程では修士から引き続き、素粒子物理学実験という基礎研究に取り組んでいます。具体的には、ニュートリノと呼ばれる素粒子の研究です。現在までに見つかっている素粒子の中で、ニュートリノは検出が非常に難しく、まだ性質がよく分かっていない側面が多くあります。私が取り組んでいる研究では、その性質解明に向けて、学生が主体となって測定装置を開発しています。いわゆる「ゴリゴリの基礎研究」で、理論もさることながら実験装置の開発にも重点を置いた研究です。

なぜインターンシップに参加しようと思ったのですか。

参加するに至った経緯としては、大きく2つの要素がありました。1つ目は博士修了後の進路です。元々アカデミアに残るつもりで博士課程に進学しましたが、研究を進めていくうちに「果たしてアカデミアでやっていけるのか」「企業に就職したとして異なる環境でやっていけるのか」という不安が生まれました。2つ目は自分の研究力への不安です。特に、博士進学後約1年間、思ったように研究が進まない期間が続き、「本当に研究力が向上しているのか」「他の分野でも通用するのか」と疑問を感じていました。これらの不安を払拭するため、腕試しのつもりで申し込みました。また、大学とは全く異なる分野に挑戦し、企業での研究生活を体験できることも魅力的でした。

素粒子物理学から工作機械分野へなぜこのテーマを選んだのですか

選んだ理由は2つあります。まず、素粒子物理学実験では測定装置を自作する際に工作機械をよく使っていたので、親しみやすいと考えました。そして決定的だったのが、募集要項に「放電加工」という文字があったことです。私の研究で取り扱っている検出器では、高電圧を印加することで素粒子を検出することができるのですが、その高電圧により放電が発生し、検出器の運転が停止することが多々あり、放電には非常に苦しめられていました。その「敵」である放電を逆に利用した加工技術があることを知り、「これは申し込むしかない!」と思いました。結果的には放電加工機の研究とはなりませんでしたが、インターン中に実際の放電加工機に触れる機会もあり、こちらも貴重な体験となりました。

最初に提示されたテーマへの印象と、その後の変化について教えてください

正直に言って、最初は複雑な気持ちでした。「金属3Dプリンター」という最先端技術は魅力的でしたが、「加工評価及びデータ解析」という言葉を見て、「すでに手法が確立されたことをやらされ、自分の思考力を活かせないのでは?」と思い込んでいました。しかし初日のガイダンスで、その不安は完全に吹き飛びました。実際のテーマは「新しく音響センサーを金属3Dプリンターに導入し、異常検知システムを開発する」というもので、さらに「センサーは外部から借りたが人手不足で研究が進んでいない。自由に進めてほしい」と言われたのです。つまり前例もデータもない、ゼロからのスタートでした。誰もやったことがないことに挑戦できるこれは私が最もワクワクする研究スタイルです。最初に抱いた思い込みは消え去り、「自分で試行錯誤できる楽しい1ヶ月になりそうだ」と確信しました。

素粒子物理学と金属3Dプリンター、専門性のギャップをどう乗り越えたのですか

表面的には全く異なる分野に見えますが、研究のアプローチには共通点がありました。素粒子物理学実験では、検出が難しいニュートリノを捉えるためにセンサー(検出器)を開発し、信号を解析して粒子の性質を調べます。今回の研究では、加工異常を検知するために音響センサーを使い、信号を解析して異常の特徴を調べるというものでした。つまり「センサーで何かを検出し、信号を解析して現象を理解する」という本質的なプロセスは同じだったのです。大学で培った「測定→データ取得→解析→改善」というサイクルを回す力が、そのまま活かせました。具体的な装置や技術は異なるため、金属3Dプリンターの仕組み、レーザー溶接の原理、音響信号の特性など、新しく学ぶことは山ほどありましたが、そこは自分で情報を集め、質問し、装置を動かしながら理解していきました。この「分からないことを自分で調べて理解する力」も、博士課程で培われた研究力の一つだと実感しました。

具体的にどのような研究に取り組み、どんな成果が得られましたか

三菱電機の金属3Dプリンターは、溶接用ワイヤーをレーザーで溶かしながら積層し、例えばプロペラなどの複雑な形状を高効率に作成できる技術です。私が取り組んだのは、加工プロセスで異常が起きた際に音響センサーで検知できるかの検証として、第一に、そもそも音響センサーで信号が得られるのか、どういう特徴の信号なのかを確認すること。第二に、造形ステージ、機材、ノズル、ワイヤー供給ローラーなど、どこにセンサーを取り付ければ最も効率よく信号を検出できるかを検討することでした。1ヶ月という短期間でしたが、音響センサーで確実に信号が得られることを確認し、信号の特性を分析し、取り付け位置による検出効率の違いまで評価できました。期間の制約もあり、完全なシステム完成には至りませんでしたが、異常検知システムの実現可能性を示し、今後の研究方向性を明確にできたことは大きな成果でした。何より、誰もやったことがないことに挑戦できたのが大きかったです。そもそも信号が見えるかどうかも分からない状態からのスタートでした。成功が確約されていない分、失敗を恐れずガンガン試行錯誤できました。

大学と企業での研究生活の違いは何でしたか?

研究の本質的なプロセスでは、それほどギャップはありませんでした。企業でも大学でも、仮説を立て、実験を行い、データを解析し、改善していくサイクルは同じです。むしろ、素粒子物理学実験で測定装置を開発してきた経験が、製造装置の研究開発にも通じると感じました。
大きく違ったのは働き方です。大学では好きな時に行って帰るスタイルでしたが、企業ではしっかり時間を決めて働くことで、規則正しい生活を送れました。また、セキュリティ意識も異なります。企業ではPCを自宅に持ち帰れないため、基本的には自宅で作業することができません。インターンシップ最後の成果発表の準備で、自宅で発表練習ができないのは少し困りましたが、企業における情報管理の重要性を肌で感じる良い経験でした。

本経験を通じて自分の研究力についてどう感じましたか

最も大きな収穫は「自分の研究力が確実に向上している」という自信を得られたことです。博士進学後、研究が停滞していた時期に「本当に研究力は上がっているのか」ととても不安でした。しかし今回、全く異なる分野で、たった1ヶ月という短期間に、ゼロから研究を立ち上げ、音響センサーでの信号確認から特性分析、取り付け位置の最適化検討まで進められました。これは、博士課程でのこれまでの研究生活(停滞していた時期も含めて)が全く無駄ではなく、確実に研究力として蓄積されていた証明だと感じました。

この経験を今後どう活かしていきますか

今回得た自信を糧に、素粒子物理学実験の研究にも新たな視点で取り組めると思います。将来的には、専門分野に囚われず様々な知識を取り入れ、それを自分の研究に応用できる研究者を目指します。今回、異分野に挑戦して分かったことは、一見全く異なる分野でも、本質的な考え方や手法には共通点が多いということです。素粒子物理学で培った「見えないものを見る技術」や「精密な測定・解析の手法」は、製造業の品質管理や異常検知にも応用できる可能性があります。逆に、製造現場の技術やアイデアを素粒子物理学実験に持ち帰ることもできるかもしれません。今回のインターンシップで、異分野に挑戦できる自信と、企業で研究者として働く具体的なイメージの両方を得ることができました。アカデミアに残るにしても企業に就職するにしても、この経験は必ず活きてくると確信しています。

これからインターンシップに参加することを考えている大学院生への助言やメッセージをお願いします。

大学院で身につけている研究力は他分野でも通用するので、自身と違う分野の研究インターンにも積極的に参加してみてください!

「少し離れたところから見る景色―企業での研究インターンシップを通じた博士課程学生の成長―」

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京都大学理学研究科 
物理学・宇宙物理学専攻 
教授 中家 剛 先生

疋田さんは研究室ではどのような学生ですか?

研究室でもトップ10~20%に入る非常に優秀な学生です。理学部物理学科は本学の中でも難しい方で、ノーベル賞受賞者も多数輩出している学部ですが、その中でも際立った存在です。彼の最大の特徴は、計画的に物事を進められることです。研究者には天才肌で生活や進め方はめちゃくちゃだけどひらめきと突破力がある学生もいますが、疋田さんはどちらかというと準備を非常に重視するタイプです。この点では珍しい学生かもしれません。

疋田さんが研究インターンシップに参加した動機は何だと思われますか?

博士課程で未解決問題に取り組む中で、自分の研究がなかなか思うように進められないと感じたことが大きな動機ではと思います。私たち指導教員からすると、解決されていない問題なのですから準備してやったからといってすぐ解けるものではなく、それは当たり前のことです。学部や修士の時は、ある程度解ける課題を与えていますが、博士になると答えがなく、アプローチの仕方も自分で考えなければならない問題に取り組みます。
疋田さんは今までのやり方が通用しないのではないかと心配になったようです。しかし私からすると、それはある意味当然のことと思っています。

研究インターンシップを通じて疋田さんはどのような発見をしましたか?

最も大きな収穫は「自分の研究力が確実に向上しているという自信を得られたこと」だと本人も言っています。企業で1ヶ月という短期間でセンサーの信号確認という課題に取り組み、明確な成果を出せたことで、自分に実力がついていたことを実感できたと思います。基礎研究では数年間成果が出ないことも珍しくありません。一見すると進んでいないように見えても、実は様々な知識やスキルが蓄積されている時期なのですが、失敗が続くとどうしても不安になるものです。企業での経験を通じて、疋田さんは研究の基礎力として、大学でも企業でも、問題設定、新しい知識の習得、仮説検証というプロセスは変わらず、共通であることを理解できたのではと思います。

大学の研究と企業の研究の違いをどう感じておられますか?

まず、タイムラインが異なります。私たちの宇宙や素粒子の研究は5年、10年、場合によってはそれ以上のスケールで進みます。5年でも早い方です。一方、企業ではそんなスケールでは開発に間に合いません。もちろん企業でも量子コンピューティングなど基礎研究に近い部門はもっと長い目で取り組んでいますが、それでも大学ほど大きなタイムラインで進めることは難しいのではないでしょうか。もう一つは生活管理です。大学は良い意味でも悪い意味でも自由で、一日何時間研究していてもいいし、疲れたら遅く来てもいい。博士学生は100%研究なので、オン・オフの切り替えが自己管理に委ねられます。インターンシップ中は非常に規則正しい生活で、オン・オフがしっかりしており、疋田さんにとって、これは非常に新鮮な体験だったようです。

さらにデータ管理についても違いがあります。私たちの素粒子や宇宙の研究は国際共同研究が多く、商業利用が少ないため、データは比較的オープンで、世界中の人と共有する文化があります。一方、企業ではPCの管理を始め、秘密保持など、非常にシビアな管理が求められます。疋田さんはこの違いにもある意味驚いたようです。

先生の研究室から企業に就職される学生は多いですか?

例年、博士修了者の約半分ほどは企業に就職し、残り半分がアカデミアに進みます。今年も4人が博士を取得しますが、2人が企業、2人がアカデミアです。素粒子や宇宙の研究をしていると就職先がないと思われがちですが、実際には大手電気メーカーに多くの学生が就職しますが、多くはハードウェアー開発、シミュレーション、プログラム開発力、データ解析能力 を買われてのことが多いです。日本の大学教育で量子コンピューターなどの素養を持つ学生の数は限られています。一方、素粒子物理学で学ぶ量子力学や場の理論などの技術は共通する部分が多く、実験物理学で培われる制御技術なども応用可能です。そのため、企業の就職先でもありがたがられることが多いですね。

研究基礎力の構成要素は何だとお考えですか?

まず、新しい知識を自ら学ぶ力です。新しいテーマに取り組む時、それに対応するためには様々なことを学ばなければなりません。誰かが教えてくれるわけではないので、自分でいろいろな知識を習得していく必要があります。これは企業の商品開発でも同じことが起こります。
次に、ハードウェアとソフトウェアの開発能力です。素粒子実験の装置には既製品がないため、一から色々なものを作らなければなりません。パーツを組み合わせてハードウェアを開発し、それを制御するプログラムも作成します。特に貴重なのがアナログ回路とデジタル回路の両方を扱える能力です。デジタル回路ができる学生は比較的多いのですが、アナログ回路もできる学生は少ない。過去にもある学生が大手エアコンメーカーに就職した際、モーターの開発で両方の知識が必要とされ、非常に高く評価されました。

特に優秀だと感じる学生の特徴は何ですか?

10年に1人、20年に1人くらいの割合で、かなり天才肌の学生が出てきます。その特徴は、まずひらめきがすごいことです。そして、それを実行できる力も持っています。さらに、経済的報酬よりも、やりたいことをやりたいという姿勢が強く、自分の実力で渡り歩いていく自信を持っています。

インターンシップの価値をどのようにお考えですか?

最も重要なのは価値観の転換です。大学の研究室ではいわゆる「研究100%」でやっている分だけ、色々なことが見えなくなってしまう可能性もあります。研究に向かいすぎて近すぎると、大きなところが見えなくなることもあり、少し離れたところから見る景色、つまり社会と触れて見る機会が必要なのです。また、本学のような環境では、周囲の優秀な学生と比較して自信を失う学生もいます。自分のグループの中だけにいると、天才的な人が周りにいれば「自分はアカデミアに残るのも企業に行くのも大変かな」と心配してしまう。でも、多くの学生は実際に社会に出ると、卓越した実力を発揮して活躍しているのです。違った人と会って、違ったテーマに短期間トライすることは、非常に意味のあることだと思います。

受入企業やC-ENGINEに対する今後のご要望をお願いします

特定のテーマにこだわるというよりは、1ヶ月程度で新しい価値観や新しい見方を学べるプロジェクトを提供していただけるとありがたいです。学生たちは新しい技術を学ぶのは得意なので、そこはあまり心配していません。むしろ、今まで自分が持っているスキルを使って、短期間でできるプロジェクトに取り組む経験が重要です。長期的な問題に立ち向かうだけでなく、社会実装すると数ヶ月でできることもたくさんあることを学んでほしいのです。
疋田さんの場合も、最初はプラズマ関連のテーマに興味を持っていましたが、話し合いを重ねて3Dプリンターの音響センサーというテーマに落ち着きました。このように、学生の背景や希望を考慮しながら、適切なテーマを一緒に設定していただけると理想的です。

産学連携の新たな価値創造を目指して

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三菱電機株式会社 先端技術総合研究所
産業オートメーションシステム技術部 

放電応用加工システムグループ 多久島 秀 様

今回の研究インターンシップをお受け入れいただいた経緯について教えてください

当社は、大学と企業が連携して高度専門人材の育成を行う「C-ENGINE」に参画しており、その取り組みの一環として研究インターンシップ生を受け入れています。
今回、疋田さんが「放電加工機に関する研究開発」のテーマに応募されたことをきっかけに、人事部を通じて我々の研究部にお話をいただきました。当初は放電加工機に関する実習を希望されていましたが、疋田さんとお話しする中で、特定のテーマに限らず、関連する技術分野にも幅広く関心をお持ちであることが分かりました。そこで、当研究部で取り組んでいるテーマの中から、インターンシップ期間中に最も力を発揮していただけそうな実習内容をあらためて検討した結果、3Dプリンターチームでの受入が決定しました。実習では、ご本人の関心や能力に応じたテーマに積極的に取り組んでいただき、短期間にもかかわらず非常に良い成果を出していただきました。研究部としても、有意義なインターンシップになったと感じています。

疋田さんに取り組んでいただいた研究テーマについて教えてください

今回の実習では、金属3Dプリンターに新たなセンサーを取り付け、異常検知を行うという研究テーマに取り組んでいただきました。このテーマは、昨年末頃から構想として温めていた重要な研究課題であり、疋田さんがインターンに来てくださったタイミングが、本格的な検証を始めるのにまさに絶好の機会でした。
また、1か月という期間で参加していただけることが分かっていたため、新しいテーマでも腰を据えて取り組んでもらえると判断し、このテーマをお任せしました。インターン生に挑戦してもらうことで、私たちとしても貴重な知見が得られますし、疋田さんにとっても価値のある経験になると考えました。
事前に、最初の1~2週間で実施すべき内容については大まかな計画の骨子を立てていましたが、実際に疋田さんに来ていただいてからは、対話を重ねながら疋田さんの専門性や研究スタイルを理解し、それに応じて計画を柔軟に調整しながら取り組んでいただきました。

素粒子物理学と工作機械、専門性が大きく異なる人材を受け入れることへの不安はありませんでしたか?

確かに専門分野の違いはありましたが、大きな不安はありませんでした。これまでにもさまざまな大学からインターン生を受け入れてきた経験があり、その中で、修士課程の学生にはある程度こちらで道筋を示す必要がある一方、博士課程の学生は自律的に研究を進められる方が多いと感じていました。
疋田さんについても、まずはその自主性を尊重してみようと考えました。もちろん、必要に応じてサポートできる体制は整えていましたが、実際には疋田さんが非常に主体的に研究を進めてくださり、こちらが想定していた以上にスムーズに取り組んでいただけました。
疋田さんご自身も、研究に集中できる環境の中で自由度高く取り組める点を、本実習の魅力として好意的に受け止めてくださっていました。そのため、定期的に進捗を確認するホールドポイントは設けつつ、基本的には裁量を持って進めていただく方針としました。

教育面ではどのような配慮をされましたか?

今回の実習は、疋田さんにとって新しい分野への挑戦でもありましたので、「一人で抱え込まないで進められる環境づくり」を特に意識しました。金属3Dプリンターやセンサーといった新しい装置については、まず必要な基礎知識を共有し、実際の使い方についても初期段階ではしっかりと説明・指導を行いました。
その後、疋田さんが装置を安定して扱えるようになってからは、徐々に主体的に作業を進めていただく形に切り替えています。日々の細かな疑問点については、作業の合間に随時相談しながら進める一方で、研究の大きな方向性については、週ごとにまとめていただいた作業内容をもとに定期的なミーティングを行い、進捗確認や必要な調整を行いました。

1ヶ月という短期間での成果について、どのように評価されていますか?

1か月という期間は、テーマを絞って集中して取り組めば、十分に成果が出せると考えていました。実際、開始時点で疋田さんと大まかなスケジュールを共有し、それに沿って計画的に進めていただいたことで、まずは当初想定していた通りの成果をしっかりと達成していただきました。
さらに印象的だったのは、こちらが設定した目標に対して、疋田さんご自身から「このようなデータも取得しておいた方がよいのではないか」といった提案があった点です。こうした主体的な提案が、結果として想定を上回る成果につながったと評価しています。

研究インターンシップからの成果は、その後どのように活用されていますか?

今回取り組んでいただいたテーマは、インターンシップ用に用意したものではなく、もともと私たちが本格的に進めたいと考えていた研究課題でした。そのため、疋田さんが実習期間中に得られた成果は、実習後もそのまま「金属3Dプリンターへの適用を進める」という研究開発の継続につながっています。
疋田さんには、当研究部における重要な研究の一端を担っていただいたと考えており、インターンシップで取り組まれた内容は、現在も社内プロジェクトとして引き継がれ、研究が進められています。

大学と企業での研究スタイルの違いについて、受入れ側として何か配慮されたことはありますか?

大学と企業では、研究を取り巻く環境にはいくつか違いがあると感じています。例えば、情報セキュリティの観点からPCの持ち出しには制限がありますし、ワークライフバランスの観点からも、所定の時間内で業務を終えていただくよう配慮しました。また、安全面については特に重視しており、インターンシップ開始時には安全教育を実施しています。基本的な注意事項に加え、金属3Dプリンターなど装置固有のリスクについても丁寧に共有しながら進めました。一方で、研究の進め方そのものについては、疋田さんの自主性を最大限尊重しました。実際に疋田さんからも「研究の進め方は大学とそれほど変わらなかった」というコメントをいただいており、研究スタイルに合うよう意図的に自由度を確保したことが、良い結果につながったと感じています。

博士課程の学生を受け入れることの意義について、どのようにお考えですか?

博士後期課程の学生は、高度な専門知識に加えて、自律的に研究を進める力を持っている点が大きな強みだと思います。加えて、今回のインターンシップを通じて、博士後期課程の学生と協働することは、より具体的な成果につながりやすいというメリットがあると、改めて実感しました。
また、疋田さんは素粒子物理学という異なる分野で専門性をお持ちでしたので、日々の対話を通じて、私たちにとっても新しい視点や気づきを得る機会となりました。こうした刺激は受け入れる側にとっても非常に有意義で、普段とは異なるメンバーが研究開発に加わることで、新しい発想や考え方が生まれ、結果として組織全体の活性化にもつながると考えています。

今後の研究インターンシップに向けて、改善点や発展させたい点はありますか?

今回は結果的に良いマッチングが実現できたと感じていますが、今後に向けては、事前の情報共有をさらに充実させていきたいと考えています。学生の専門性や関心、インターンシップを通じてどのような経験をしたいと考えているのか、また、私たちがどのような研究テーマを提供できるのかといった点を、事前にもう一歩踏み込んで共有できれば、より効果的なマッチングにつながると考えています。
今後は、こうした点をあらかじめ整理した上で事前のすり合わせを行うことで、学生と受け入れ側の双方にとって、より納得感のある研究テーマの設定につなげていきたいと考えています。

研究インターンシップ参加を目指す博士課程の学生へメッセージをお願いします

企業での研究インターンシップに対しては、不安を感じる方も多いと思います。ただ、博士後期課程の学生の皆さんであれば、すでに自ら研究を進める力を十分に身につけているはずですので、ぜひ自信を持って一歩踏み出してみてください。「挑戦してみる」という経験そのものが、非常に貴重な学びになりますし、企業での研究現場で得られる出会いや気づきは、将来アカデミアに進む場合でも、企業に就職する場合でも、研究者としての幅を広げる経験になるはずです。ぜひ積極的にチャレンジしていただければと思います。

疋田さんへメッセージをお願いします

疋田さんには、私たちの期待を上回る成果を出していただき、本当に感謝しています。今回インターンシップを受け入れさせていただき、心から「来ていただいてよかった」と感じています。
現在取り組まれている研究分野とは直接的には異なるテーマでしたが、今回の企業での研究経験は、今後の研究活動において大きな糧になるはずです。これからも研究者として大いに活躍されることを期待しています。ぜひご自身の強みを大切にしながら、頑張ってください。

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