[開催報告] 研究インターンシップ報告大会2022

6月10日、企業の研究インターンシップに参加した大学院生4人に各企業での体験談を報告していただきました。1、2カ月で多くの研究作業に携わり、企業での研究について、大学との研究の違いを学ぶことができたそうです。最後に研究インターンシップに参加する前、参加する中で気を付けたことなどを、インタビューやグループ討議を通して聞くことができました。

体験報告会に登壇した大学院生のプロフィールとインターンシップ内容

米村拳太郎さん:九州大学大学院数理学府数理学専攻の博士課程3年生。専門は数学の位相幾何学。

普段できない新しい分野の研究を体験したいと、発電・蓄電・送電システムに関する研究開発を行っている住友電気工業(株)のパワーシステム研究開発センター環境エネルギー部門で、1カ月の研究インターンシップ(テレワーク)に参加。実習先でのテーマは、VPP(Virtual Power Pant)のための電力データに関する時系列データ解析。データサイエンスの分野で必要なプログラミング言語Pythonは未経験でしたが、事前に参考書や、大学側のサポートで統計学の先生のゼミに参加させてもらうなど、データ解析に必要と思われる知識を学習。実習後、数学がモノづくりに応用できることを実感し、研究や進路についての選択肢が広がったそうです。

駒場京花さん:筑波大学大学院理工情報生命学術院数理物質科学研究群の博士課程2年生。専門は半導体に応用できる導電性高分子複合材料の合成と物性評価。

これまで大学で研究してきた中で培った高分子化学の知識や技術で社会貢献をしたいとのことで、高分子化学系企業の研究職を希望されていたこともあり、大学と企業の研究の違いを知るために研究インターンシップに参加。ゴムやプラスチックを合成する化学メーカーである日本ゼオン(株)の総合開発センター高機能樹脂研究所で2カ月、高周波伝送用のフィルムの作製条件の検討とサンプル作成、及びその電気特性評価を行いました。実習を通して、「製品化による社会貢献を見据えて市場価値を考えて研究する」という企業の研究における大学との違いを実感。今後のご自身の博士研究においても、市場価値をより深く考察していきたいと思ったそうです。

福島碧都さん:東京都立大学大学院理学研究科物理学専攻の博士課程3年生。専門は、X線を観測して宇宙での歴史を解き明かすX線天文学で、その中でもX線を観測する衛星の小型化に関する研究を行っている。

企業の研究職を知りたい、異分野の研究環境で視野を広げたいと考え、研究インターンシップに参加。体験先はシリコン結晶を用いた高効率太陽電池の開発を行う京セラ(株)の先進マテリアルデバイス研究所ネルギーデバイス開発部です。3週間の実習で、シリコン太陽電池の電極材料の最適条件のシミュレーションから試作・評価までをおこない、部署内部でも成果報告を実施。研究インターンシップを通して、企業での研究が利益に直結していることを実感したと同時に、メーカーには研究職以外にも生産技術・保守管理・特許などの仕事があることを知りキャリアパスに対する視野が広がったそうです。

小井手祐介さん:大阪大学大学院基礎工学研究科機能創生専攻の博士課程2年生。専門は流体力学の中での界面活性剤水溶液の分子シミュレーション。

進路選択に向けて企業でチームとしての研究を体験したいと思い、三菱重工業(株)の総合研究所燃焼研究部で2カ月間の研究インターンシップに参加。実習先での研究テーマとして、ごみ焼却炉の低空気比自動運転に向けたO2ソフトセンサの精度向上を選択されました。ごみ焼却で問題となる、計測できない焼却炉の酸素濃度を機械学習で予測し、既存モデルに比べて予測精度の向上に成功するという成果も残されました。研究インターンシップを通して、異分野の専門家とのコミュニケーションが重要だと実感し、今後に役立てたいと思ったそうです。また、改めて社会に貢献できる研究者になりたいという思いを確認されたとのことでした。

研究インターンシップ体験についての質疑

会場からの質問をもとに、テーマ決めの際のポイントについて、伺いました。多くの学生は、現在大学で取り組んでいる研究とは異なる、企業でしか実施できないような研究を体験できる点を重視したと答えていました。特に、C-ENGINEならではの、企業との間を仲介する大学コーディネーターとの相談が、テーマを決める上で参考になったそうです。 エントリーシート作成で気を付けた点について聞いたところ、これまでの経験よりも、自身の人柄や、研究インターンシップで何を学びたいかを明確に書くことに気を付けたと答える方が多くありました。

グループ討議

博士研究を進める上で、研究インターンシップに行く時間が確保できるかは気になるところですが、皆さん問題はなかったそうです。空いた時間にオンラインで研究室と連絡を取ることや、中には、実習先が研究室の定期的なゼミへの参加を許可してくれるなど、学生の研究活動への柔軟な対応をいただけたそうです。むしろ普段できないことができて気分転換になり、より研究が進んだと答える方もいらっしゃいました。研究インターンシップに参加したことで、企業での研究開発にこれまでの学びが活かせることを実感し、アカデミアだけでなく企業を含めた進路選択の幅が広がり、より一層企業で研究したいという思いが強くなったとの声もありました。

研究インターンシップを通して、皆さん多くのことを学び、今後の進路に大きな影響があったとお答えいただきました。共通して普段できない企業での研究を体験したいという動機で参加されましたが、単なる体験にとどまらず、これまでの大学で学んだ専門知識が活かされ、異分野のテーマでも企業の研究開発で活躍できることを実感し、博士学生の自信にもつながったそうです。また、今回の企業での体験は、今後の研究スタイルやキャリアに大いに参考にしていただける経験となり、研究者としての視野が広がったとのことでした。

●インターンシップ報告会の録画ビデオはこちらより視聴できます。ご質問等は、C-ENGINE事務局までご連絡ください。

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