博士課程の就職は不利?ー「選択肢が狭まる」は本当?キャリアの実態を考えるー
「博士課程に進むと、就職に不利になる」
そんな話を聞いて不安を感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
SNS等でも「博士に行くと就職できる会社が減る」「修士で就職した方が選択肢が広い」という書き込みを目にすることがあります。
実際、博士課程に進むと就職の選択肢は狭まってしまうのでしょうか?
本記事では、「不利か有利か」を単純に結論づけるのではなく、博士課程進学によって何が変わるのかを焦点にあてて、博士取得後の就職の選択肢について考えてみたいと思います。
「博士課程の就職は不利」と言われる理由
博士課程に進むと就職が不利になると言われる背景には、いくつかの理由があります。
① 年齢が上がる
博士課程修了時には、20代後半から30代になってしまうことも珍しくありません。
企業によっては、新卒一括採用や同期入社を前提とした人材育成をおこなっているケースがあるため、修士卒と比べ応募枠が少ない/無い場合があります。
② 専門性が高すぎて活用に困ると思われる
「専門がピンポイントすぎて自社では活かせないのでは」と企業側が感じているケースもあります。
学生側もまた、「自分の研究と完全に一致する企業しか無理なのでは」と考えてしまい、自分で応募先を狭めてしまっていることがあります
③ 情報が少ない
博士学生の就職活動は、研究室や指導教員、先輩からの情報に依存しがちだったり、場合によってはあまりそういう話をしやすい環境ではなかったりすることもあります。そのため、大学の外でどのようなキャリアがあるのかを知らないまま進路を決めなくてはならない、ということも少なくありません。
博士だからこそ、広がる選択肢もある!?
「博士課程に進むと選択肢が狭まる」という表現は、ある意味正しく、ある意味正しくないように思います。
確かに、すべての企業や職種において有利になるわけではありません。しかし、博士号取得によって新たに開かれる道もあります。
例えば、大学教員やポスドク職、国立研究開発法人等での研究職は、博士号を持っていることが前提条件になってきていますし、企業の研究職としても積極的に求められるようになってきています。特に、ディープテック系スタートアップや、AI、半導体、創薬、材料開発などの研究開発職などは、博士号取得率が非常に高い所が多いでしょう。
近年、文部科学省・経済産業省で、博士人材の活躍促進を進めており、企業側の採用意欲も高まってきています。
「すべての選択肢が広がる」というわけではありませんが、「研究者・高度専門人材としての道が拡がる」ことは確かです。
グローバル企業では博士号が強みになる?
分野によって、特に半導体やAIなどでは博士人材への期待が大きくなってきており、また、創薬、材料、量子など最先端技術開発が必要な分野や、海外との共同研究に携わるような部署では、博士号取得者が中心となってプロジェクトを進めるケースも少なくありません。
こうした分野では、企業が単独で研究開発を進めるだけでなく、
👉海外の研究機関や大学との共同研究
👉学会や国際会議での情報発信・収集・ネットワークづくり
👉論文や特許を通じた知識創出
👉長期的な研究テーマの推進
などを日常的におこなっていく必要があります。
また、研究開発の最前線では、未知の課題に対して仮説を立て、検証し、必要に応じて方向修正を行いながら成果を生み出していくことが求められます。
こうしたプロセスは、博士課程で経験する研究活動と共通する部分も多く、企業側が博士人材に期待する理由のひとつでもあります。
すべての企業や部署がそうとは限りませんが、
「博士だと有利」
というよりも、むしろ
「博士であることが特別ではない」「博士号取得者が周囲に多く、博士であることが自然な環境」
になっている場合もあるでしょう。
つまり、博士課程に進むことで、一般的な新卒採用とは異なる世界が拓けることもあるのです。
本当に狭まっているのは「見えている選択肢」だけかもしれない
博士課程では、それこそ四六時中、中には寝食も忘れて自身の研究テーマに取り組む人も多いでしょう。
自分の研究を深掘りしていくことはもちろん必要なことですが、外の世界をしばらく見ないうちに、大学教員もしくは研究職、という限られたイメージだけで進路を考えてしまっている、
つまり、
就職先そのものが狭まっているのではなく、「見えている選択肢」が狭くなってしまっている
という可能性があると思います。
しかし実際には、大学教員や企業研究職だけでなく、博士卒が活躍できる世界はもっといろいろなところにあります。
例えば、データサイエンティスト、技術営業、コンサルティング、公的機関、スタートアップ・起業…
多様なキャリアが存在するはずなのに、知らない選択肢を選ぶことはできません。
だからこそ、企業研究者と話したり、研究インターンシップに参加したりすることが大きな意味をもつのです!
「有利/不利」よりも、「何が変わるか」を知ろう
博士課程に進むことで、
・ 一部の選択肢は狭まるかもしれない
・ 新しく拓かれる道・選択肢もある
・ 情報量によって、見える世界は大きく変わる
ということは言えるのではないでしょうか。
大切なのは、
「博士課程進学が不利か?有利か?」
というよりも、
「研究経験を経て、自分がどんな研究者としてどのような価値を生み出していきたいか」
を考えることです。
進路のことを考えたい人は、まずは研究室の外にも目を向けてみることで、新しい可能性が見えてくるかもしれませんね。
まとめ
博士課程に進むと就職の選択肢が狭まる… 正直、一部事実とも言えます。
ですが、単純に選択肢が狭まっているのではなく、むしろ研究者・高度専門人材としての新しい選択肢が広がっているという側面もあるし、また、もしかすると自分で勝手に狭めてしまっている、という側面もあるかもしれません。
皆さんには、博士課程進学が、「不利か有利か」という単純な議論ではなく、自分自身がどんなキャリアを築いていきたいかを考え、そのために必要な情報や経験が得られる選択肢を掴んでほしいと思います。
- 博士人材の民間企業での活躍促進について(文部科学省)https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/1357901_00015.htm
「博士人材の民間企業における活躍促進に向けたガイドブック」では、博士課程学生の皆さんが就職活動を始める上での考え方・ポイントがまとめられていますし、「企業で活躍する博士人材ロールモデル事例集」で、先輩たちがどのようなキャリアを選択したかなどの事例が見れます!是非参考にしてください - 研究力向上とキャリアパス構築に役立つ研究インターンについてはこちら
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